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【社説】追加経済対策 雇用最優先で取り組め

2009/03/30

 二〇〇九年度の政府予算案と関連法案が成立した。一段落ではあるが、景気は史上最悪のペースで坂道を転げ落ちている。政府は雇用確保をはじめ追加経済対策のとりまとめを急がねばならない。

 与野党が衆院と参院で逆転した「ねじれ国会」の下、予算審議は当初、難航が予想された。だが、民主党は参院で予算案と関連法案を否決し、与党による衆院での再議決を容認した。背景には、景気の厳しさを無視できないという現実的判断がある。与野党がいたずらに対立を長引かせず、予算の年度内成立にこぎつけたのは、ひとまず歓迎したい。

 当初予算には、医師確保や救急医療、非正規雇用労働者の就労支援、地域活性化など重要政策が盛り込まれている。いずれも国民の暮らしと安全の確保に欠かせない。先に成立した二次にわたる〇八年度補正予算と合わせて、着実な執行が望まれる。

 とはいえ、景気下支えとなるとそれでも力不足と言わざるをえない。内閣府の試算では、日本経済の総需要と供給能力の差を示す需給ギャップが昨年十-十二月期でマイナス4・1%に達している。金額で二十兆円強という空前の規模だ。民間には、もっと大幅なマイナスとみる見方もある。

 民間部門が内需、外需とも冷え込む中、これほど巨額の需給ギャップを残したまま自然な均衡回復に任せようとすれば、供給能力の大幅削減、すなわち倒産と失業の増加は避けられない。

 当初予算が成立したばかりで異例ではあるが、無駄と非効率を徹底的に排除しつつ、ここは大型の補正予算を組んで、政府が需要をつくり出すべきだ。

 最優先課題は雇用対策である。企業の人員削減は非正規だけでなく正規雇用にも及んできた。予算案成立と同時に雇用保険法改正案も成立し、非正規労働者約百五十万人が失業保険の対象になった。雇用調整助成金を拡充し、政労使による日本版ワークシェアリングの機運も高まっている。

 本格的な雇用創出には景気全体の底上げと企業活動の活性化が欠かせない。公共事業の追加や減税は大きな刺激になる。たとえば小中学校の耐震化や電柱の地中化、公園整備などは計画を前倒しして実施したらどうか。環境保護に役立つクリーンエネルギーの開発も欠かせない。

 雇用確保や環境保全につながる公共事業という視点から、追加経済対策を立案すべきだ。