2009/03/26
政府、連合、日本経団連など政労使は「雇用の安定と創出」で合意した。大量失業が懸念される中、雇用の安全網強化で一致したことは意味がある。緊急を要するだけに合意内容の具体化を急げ。
政労使が雇用問題で合意したのは二〇〇二年以来、七年ぶりだ。麻生太郎首相が「今は経済有事の時」と危機感を語れば、高木剛連合会長や御手洗冨士夫経団連会長は雇用悪化防止に努力する姿勢を強調した。
最重要課題に取り上げたのが「日本型ワークシェアリング(仕事の分かち合い)の推進」である。企業と組合側は休業や残業削減などで正社員や非正規雇用労働者の雇用を維持する。政府は雇用調整助成金制度を拡大。現行の休業や教育訓練、出向とは別に、残業を減らす企業に対して新たに雇用維持奨励金(仮称)を支給する。
また失業給付が切れた人や最初から雇用保険に入っていない人など、就職困難者に対する職業訓練期間中の生活支援も行う。政府は「基金」を創設して、月十万-十二万円を支給する計画だ。
このほか職業訓練の強化のため公共職業安定所(ハローワーク)の職員・相談員を増員したり、雇用創出では農業や介護など地域雇用の開拓で政労使三者が協力していくことになった。
昨年秋以降の“非正規切り”や正社員削減急増を考えれば、合意事項は迫力不足である。とはいえ今年は完全失業率が過去最悪になるとの見方もある以上、政策実現に向けたスピードが重要だ。
雇用調整助成金の拡大は省令改正で実現できるから、厚生労働省は一日も早く実施すべきだ。
就職困難者への生活支援は三年間で貸し付け方式が検討されている。これでは政策効果が限られよう。英国などの失業扶助制度と同様、きちんと法律で制度をつくり給付方式とすべきである。貸し付けでは借り手の手続きが煩雑だ。
ハローワークの機能強化は大切だ。母子家庭や障害者など労働弱者とされる人たちへの職業紹介などは民間では十分にできない。その一方、地方分権をめぐりハローワークの縮小・地方移管論も出ている。職員らの増員は慎重に行うべきだ。
日本型ワークシェアの実態は自動車や電機メーカーなどが実施している緊急避難型を追認・拡大したものだ。欧州などの多様就業型や雇用創出型とは異なる。同一価値労働・同一賃金の実現など、今後も真剣な改革議論が必要だ。
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