2009/03/09
経済的事情や虐待などで親からの養育を受けられない3歳未満の乳幼児を育てている豊橋市の「ひかり乳児院」に、景気悪化の影が忍び寄っている。昨年末から、派遣契約を切られたとして子どもを預けにくる親が現れており、今後は経済的な苦しさを暴力で子どもにぶつけることも懸念される。同院は「子どもが虐待を受けていないか、地域でしっかり見守る必要がある」と訴えている。
定員49人の同院だが、2月1日時点で預かっている子どもは51人。突然の不況で昨年11月以降、定員オーバーの状態が続いている。うち22人は虐待を受けていた子どもたちで、特に親が経済的に困窮しているケースが目立つという。
昨夏には、無職の父親から顔が倍に膨れ上がるほどの暴力を受けて運び込まれた2歳の女児がいた。職がないいらだちが、父親を虐待に走らせていたという。
虐待が発覚した病院で、児童相談所の職員がすぐに保護が必要と判断。親から女児を引き離すために、診察室の窓からそっと外の職員に女児を渡し、そのまま乳児院へ。半年以上がたち、女児の顔からあざは消えたが、院の男性職員を見ると泣きだすという。心の傷は、今も深く残っている。「この不況で、見えないところで虐待は増えているのではないか」と、織田秀隆院長(57)の不安は尽きない。
児童虐待問題に詳しい長谷川博一・東海学院大教授(臨床心理学)は「経済的に困窮することで、親は子どもを重荷に感じる。それが暴力や育児放棄につながることも多く、とくに手のかかる乳幼児は重荷になりやすい」と話す。
長谷川教授が主宰する、虐待してしまうことを思い悩む親のグループでも、約3割の人が経済的な厳しさを虐待の理由に挙げているという。「今後は、親がどこにも相談することなく、突然、子どもを施設などに置き去りにするようなケースが増えるのではないか」と話す。
今のところ、派遣切りにあった親から虐待を受けた子が運び込まれたケースは、同院ではない。だが、人知れず悲鳴を上げている子どもが増えている可能性はないか。これまで虐待が表面化するたびに、病院や児童相談所、学校など関係機関など地域内の連携の必要性が叫ばれてきた。100年に1度という不況の今こそ、地域の力が試されている。
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