2009/03/06
「不況」を理由に・・・違法行為に罰則なし
雇用不安が増す中、全国の労働局に「出産・育児で不利益を受けた」という相談が増えている。妊娠や出産などを理由とした解雇は違法だが、企業側は「不況による業績不振」を理由にする例が多い。不況のあおりで産休・育休中の“弱者”が苦境に追い込まれている。
半導体メーカーで2003年から契約社員として働いていた横浜市緑区の佐藤知美さん(36)の元に、契約打ち切りの文書が届いたのは昨年9月末のことだった。産休終了直後に、突然だった。理由は「業績の不振、組織変更による人員削減」。神奈川労働局は会社に継続雇用を指導、佐藤さんも労働組合に加入し、2度の団体交渉に臨んだが成果はなかった。
東京都三鷹市に住む妊娠6カ月の佳代子さん(39)=仮名=は、都内の情報機器関連会社の正社員だった昨年11月、上司に妊娠を伝えた直後に解雇を予告された。「わが国を含める世界的な不況」が理由で、違法となる「妊娠」には触れていない。
育児・介護休業法や男女雇用均等法で、妊娠・出産や育休取得などを理由とする不利益な取り扱いを禁止している。しかし、全国の労働局への育児休業の不利益取り扱いに関する相談件数は毎年ほぼ2割増で推移し、07年度は882件。
「正社員の女性が育児休業から復帰する際、会社側から『業績が悪いのでパートなら復帰できる』と言われた」「育児休業中の男性が上司に『男なのに育児休業を取るのか』と中傷された」。東海地方の労働局でも特に昨年12月以降、こうした相談が増えている。
愛知労働局雇用均等室の担当者は「育児休業取得を理由にした不利益取り扱いは違法と知っていても、具体的に何が該当するのか、企業側が分かっていないケースも多い」と話す。
現行法では、違法行為に対する調査・救済措置が定められておらず、罰則もない。好転しない場合には、同局内のあっせん制度があるが、これも十分機能していない。今国会で育児・介護休業法改正案の提出が検討されているが、違法な解雇を本当に阻止できる改正になるかどうかは不透明な状況だ。
◆米国は差別に罰則
中央大法科大学院客員教授の中下裕子弁護士の話 米国には雇用差別禁止に関する法律に違反した企業に、公共事業の請負契約や入札を制限する罰則がある。日本でも、不利益取り扱いが企業にとって経済的に高くつくという仕組みが必要だ。
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