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【静岡】焼津水産高卒業生でただ1人漁師に 藤田君、父の跡継ぐ決意

2009/03/03

 静岡県立焼津水産高校(焼津市焼津)と同校専攻科で2日、卒業式があり、漁師を目指す男子生徒が同級生ら162人とともに巣立った。漁師になる卒業生は年々減り、ここ10年間の平均は2、3人だが、今回はこの生徒だけ。「名人と呼ばれるまで頑張りたい」と意気込んでいる。 (焼津通信部・高橋健一)

 浜松市西区雄踏町、藤田晃平君(18)。漁師の父親の跡を継ぎ、この春から「たきや漁」に取り組む。夜の浜名湖を漁場に、光で魚をおびき寄せる伝統漁法で、クロダイやカニを捕る。

 たきや組合によると、昭和40年代の最盛期には120人いた漁業者も、今は23人までに減った。一時は美容師になりたいと思った藤田君も、夜遅く朝早い父親の姿を見て「祖父の代から続く仕事。自分がやらないといけないと思った」。

 同校は県内唯一の水産高校。同校によると、1922(大正11)年の開校当時、就職先はマグロやカツオの遠洋漁業が主だった。近年では漁業離れが進み、進学したり市内の水産加工工場に就職したりする生徒が多いという。

 もっとも同校では、卒業後にそのまま漁師になるのは3年に1人程度。漁師を目指す生徒は卒業後、大型船舶を動かす資格を取得するため、2年間の専攻科に進学する。

 専攻科を経て毎年、数人が幹部候補生として漁師になっている。本年度は団塊の世代の大量退職で求人が多かったこともあり、タンカーや輸送船に就職したという。

 燃料費高騰など漁業を取り巻く環境は厳しい。「浜名湖は魚が減っているし、透明度も悪くなった」と藤田君。それでも伝統漁法を継ぐ3代目は「自分のような若い後継者が頑張らないといけない」と張り切っていた。