2009/03/01
深刻な不況で失業者が急増する中、担い手不足に悩む農業への就業希望者に対する相談会が28日、静岡市駿河区の県男女共同参画センターであった。雇用情勢の悪化を受けて県農業振興公社などが開いた相談会で、派遣切りにあった人らが殺到。31人の採用枠に約10倍の約300人が訪れ、農業への関心の高さをうかがわせた。(報道部・赤野嘉春)
「どれぐらい集まってくれるか心配だったが、これほど多いとは…」
県産業部農林業局の杉山行由・経営基盤室長(50)は、目を丸くした。県による農業分野に限定した相談会は初めてだったが、午前10時の開場前には40人近くが訪れた。ほとんどのブースで面接待ちの列ができた。
県が1月末に農業法人などを対象に求人状況を調べた結果、35社が正社員やパートなど計136人を募集していることが分かり、急きょ相談会を企画。このうち野菜や花、畜産などの20の農業法人が参加した。
求職者の農業に対する思いはさまざまのようだった。経営者と折り合わずに建設会社を辞めた元営業マンの男性(40)=藤枝市=は「心機一転違う仕事でやり直したかった。でもライバルが多すぎて採用は難しいかも」と不安げ。
「年齢的に厳しいかも」と見回したのは、10日前に製紙工場の派遣契約を切られた男性(44)=静岡市。公共職業安定所(ハローワーク)ではパートが多く「将来の見通しが立たない。正社員として採用してくれれば何でもやるが…」と険しい表情を見せた。
一方、法人側にとって不況は人材獲得の好機。「やる気があれば、後継者に育てたい」「生産現場を任せたい」などと意欲的に面接に臨んだが、現状は厳しそうだった。
「意気込みだけで続けられる仕事ではない」と応じたというのは磐田市で観葉植物を栽培する大杉芳克さん(60)。自然が相手だけに「甘い考えではつとまらない」とも。
三島市で養豚業を営む杉本吉輝さん(60)は「やり方次第では将来性もある」と前置き。糞(ふん)の処理や力仕事もあるが、「頑張れば、家族を養えるようになる」と激励していた。
農業の就業者数 農業白書によると、1965年に1151万人だった農業就業者は2005年には335万人に減少。農業を主な仕事とする人のうち65歳以上が57・4%(05年)と高齢化も進行し、全国的な耕作放棄地増加の原因となっている。
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