2009/02/25
世界的な不況の影響でリストラの嵐が吹き荒れる中、慢性的な人手不足に悩む三浦市の漁師が、失業した若者にラブコールを送っている。しかし、応募があっても、なかなか定着してもらえないのが実情。募集者で同市南下浦町の定置網漁業者の木村俊光さん(57)は「仕事がきついのは最初の1カ月。それさえ乗り越えれば、たくさん稼げる」と、若者の奮起を促している。 (新開浩)
午前五時二十分。まだあたりが真っ暗な中、木村さんの船で海へ出た。数分で定置網を仕掛けた場所に着くと、木村さんは妻の富美子さん(60)や息子の信広さん(38)、孫の航輝君(17)らとともに、手際よく網を引き揚げていく。
アジ、ヒラメ、ヤリイカなど五十種類。計約四百キロの魚が二時間弱で船に揚げられると、木村さん一家は、手際よく、サイズごとに分類してかごに入れた。
漁師の朝の始動は、その日の予想水揚げ量で決まる。魚市場が開く午前七時半までに、作業が片付く時間を逆算するためだ。
「今日の売り上げは三十万円くらい。冬にしては多い。夏は毎日三トン以上。作業量が少ない冬場に、仕事を覚えてもらえるとベストなんだけど…」と、木村さんは言う。
中学時代から漁を手伝っている航輝君は、「最初はしかられてばかりだった。だけど、最近は体が自動的に動くようになった。次にやる作業が分かるようになると楽になる。将来は親の仕事を継ぐ」と語る。
「家族以外にも従業員を増やそう」と、二年前に始めた求人募集。対象は三十五歳以下の男性で、給料は月二十万円からスタート。年一回の昇給と、水揚げに応じた年二回のボーナス(月給一-二カ月分)がある上、朝昼二度の食事付き。定休日は魚市場と同じ火、土曜日が基本。悪天候の日も休漁だ。だが、「一週間ももたずに辞める人」ばかり。
「十年間勤めれば月給三十万円。食費は夜の酒代だけでいい。それでも来ない。ここには仕事はある。やる気のある若い人がより好みせず、やってきてくれれば」と木村さんは新戦力を心待ちにしている。
県内漁業の現状 県の統計では、昨年の県内の漁協組合員は海が4395人、川など内水面6110人。いずれも10年前に比べ約2割減少した。
大手水産業者らでつくる全国漁業就業者確保育成センター(東京都)が全国100件以上の漁業求人情報をネット上で公開しているが、「不況で応募者が増えると思ったが肩すかしの状態。景気に関係なく、やる気のある人でないと定着しない」(同センター)という。一方、同センターを通じて求人募集をしている三浦市初声町三戸の初声漁協では、初心者向けに5日間の漁業体験学習も実施している。
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