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【愛知】お仕事チャレンジ 軌道に 「短時間 支援員同行 報酬」で自信

2025/12/02

◆不登校経験女性 「外出楽しくなった」
◆休退職経験男性 「過去伝えて楽に」

 市の委託で、引きこもりやニートなど困難を抱える若者の就労を支援する「若者・企業リンクサポート」(中区)が始めた事業「お仕事チャレンジ」が軌道に乗り始めた。短時間の仕事を体験して謝礼金を受け取るシステムで、昨年4月から約80人が挑戦。就労につながる事例も増えている。(垣見窓佳)

 ◇ ◇ ◇

 北区の女性(23)は、昭和区の洋菓子店「おうち菓子 マダムアン」(樋口直子店主)で菓子の箱にスタンプを押す仕事に挑戦した。この店での作業は4回目。箱にケーキが入れられる様子を見て「自分が関わったものが人の手に届いているのを見るのはうれしい」とほほ笑んだ。

 女性は高校で人間関係がうまくいかず不登校に。定時制高校に転入して卒業したが体調の不安から就職せず、引きこもり気味になった。母親がリンクサポートに併設された相談機関「子ども・若者総合相談センター」を訪ねるよう促し、お仕事チャレンジに取り組むようになった。

 作業2時間分の給料は2千円。女性は「まだ一人で仕事をするのは不安だけれど、外に出るのが楽しくなってきたし、働くイメージも湧いてきた」と声を弾ませた。

 お仕事チャレンジを経て就労につながったケースもある。熱田区の男性(24)は、高校卒業後に就職した工場で同僚から冷たい言葉をかけ続けられたことで精神的に不調となり、退職。その後に働いた日本料理店でも、長時間労働などが原因の不眠で休職に追い込まれた。

 男性を担当した支援員の松浦正和さん(61)は、男性に生活基盤を整える手伝いをした上で、「珈琲元年中川本店」(中川区)から発注された店舗周辺の草むしり作業を紹介。男性が喫茶店で働くことに興味があったこともあり、その後、店のアルバイト採用面接を受けることになった。

 面接には松浦さんも同行。店側に精神面の不調で休職した過去や、高圧的な指導を避けてもらいたいことを説明した。男性は「率直に自分の苦手なことやメンタル不調の過去を伝えることには迷いもあったけれど、気持ちが楽になり、今は楽しく働いている」と語る。アルバイトの仕事に慣れ、店舗を運営する会社が社員として登用する方向で調整が進んでいるという。

 リンクサポートの大島泰子所長は「社会経験が不足していたり、挫折した経験があったりする若者にとって、お仕事チャレンジが小さな自信につながっている」と効果を話す。企業には「人となりや得意不得意を知った上で、等身大の若者を採用してもらいたい」と呼びかける。

【若者・企業リンクサポート】
 一般社団法人草の根ささえあいプロジェクト(中村区)が、市からの委託で運営する。市内在住の15~39歳を対象に、2019年に事業開始。本人の特性に合った環境の仕事を紹介することで、長期就労につなげることを目指す。24年4月~25年3月には188人が相談に訪れ、82人の就労が実現した。

支援員に見守られながら作業する女性利用者(左)=昭和区の「おうち菓子 マダムアン」で
支援員に見守られながら作業する女性利用者(左)=昭和区の「おうち菓子 マダムアン」で
リンクサポートで行われた企業交流会で、今の仕事について語る男性利用者(左)=中区で
リンクサポートで行われた企業交流会で、今の仕事について語る男性利用者(左)=中区で