2025/01/30
小規模の企業で低迷 「意識啓発図る」
県内企業の障害者雇用率が低迷している。昨年末に発表された2024年の雇用率は2.36%で、法定雇用率の2.5%を下回り、全国ワースト5位。小規模な企業で雇用が進んでいないことなどが要因とみられる。来夏に控える対象企業の拡大と法定雇用率の引き上げに向け、さらに厳しくなりかねない情勢だ。 (奥村圭吾)
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「来年7月に法定雇用率が2・7%に上がる。計画的に雇用に取り組むよう指導いただきたい」。愛知労働局の小林洋子局長らが27日、県経営者協会(名古屋市中区)など五つの経済団体を訪れ、要請した。同行した県の古本伸一郎副知事も県と労働局が共同で設けている相談窓口「あいち障害者雇用総合サポートデスク」(同市中村区)や奨励金などの支援策を紹介し「ぜひ今まで以上に宣伝していただきたい」と求めた。
同協会の大島卓会長は「障害があり、働きたい意欲がある人をたくさん働けるようにする社会の仕組み。一生懸命協力したい」と応じた。
先月20日発表の厚生労働省のまとめ(昨年6月1日現在)によると、県内の雇用率は前年比0・08ポイント増で過去最高だった。ワーストは2・29%の東京で、愛知県は富山県と同率だった。愛知県の法定雇用率の達成企業は7434社中3459社で46・5%、前年から5ポイント減った。
法定雇用率は昨年4月に2・3%から2・5%に引き上げられたばかり。対象企業も「従業員43・5人以上」から「40人以上」に広がった。その影響で達成できない自治体が愛知を含め24都府県に上った。
愛知労働局によると、県内には、大手自動車会社の下請けをはじめ小規模の企業が他県と比べて多く、それらの企業の雇用率の低さが課題になっている。担当者は「企業を戸別訪問したり資料を郵送したりして制度の意識啓発を図っていくしかない」と話す。
産業の好調さが裏目になっている面もある。県内の対象企業に勤める労働者は約175万人で前年比約4万人増。令和以降、22年を除き、毎年数千~数万人増加しているといい、障害者の雇用を増やしても労働者数の伸びに追いつかなくなっている。
来年夏から法定雇用率が上がり、対象企業も「37・5人以上」に拡大されるため、達成のハードルは高くなる。県の担当者は「ここで踏ん張らないと」と気を引き締める。
厚労省労働政策審議会障害者雇用分科会の委員を務める「全国手をつなぐ育成会連合会」の大谷喜博副会長は「障害がある人にとって就労は大きな喜びで、自尊心や自立心を高める。企業にとっても何かに配慮するという考え方が広がる」と話す。企業に対し、民間委託している事務や集配、清掃などの軽作業を障害者に代えられないか検討することを提案する。
一方で、数だけ満たそうと一気に採用しても、仕事との相性が合わなければ定着しないため、大谷さんは「目標値に焦らず、一人一人の力を生かせる仕事がないか適材適所で探してみてほしい」と期待する。
◆中部6県では滋賀トップ
中部6県では、滋賀県が2・66%(同0・14ポイント増)で最も高く、鹿児島県と同率で全国トップ10位入りした。福井、岐阜、三重各県も法定雇用率を達成したが、長野県は未達成だった。
滋賀県と滋賀労働局は2012年、全国でも珍しい「県障害者雇用対策本部」を発足して連携を深めてきた。昨年3月には、本部長の三日月大造知事が基本方針をまとめた「本部長宣言」を発令。障害福祉サービス事業所から一般就労への移行を支援するなど具体的な取り組み目標を掲げ、経済界にも雇用の促進を強く働きかけてきたという。
中部6県の2位以下の順位は福井2・61%、岐阜2・53%、三重2・52%、長野2・47%の順で、愛知が最下位だった。
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