2025/01/22
根深い職業ジェンダーギャップ打開へ
性別や年齢などが偏った職業は少なくない。慢性的な人手不足なのに女性が少ないIT職も、その一つ。根深い職業ジェンダーギャップに切り込もうと、女性を増やそうとする動きもある。「多様性のない業界は社会に偏りをもたらす」という問題意識からだ。 (中沢佳子)
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◆慢性的な人手不足
「初めは学習動画を見ても理解できないことばかり。カタカナの羅列で、心が折れそうになった」。IT業界への転職を目指し勉強中という大阪府の会社員女性(30)が苦笑する。
衣類関連会社で秘書を務め、事務職に。子育てなど今後の人生を意識し、柔軟な働き方ができそうなIT職への転職を考えている。でも、経験がない。そんなときIT関連会社「トラント」が手がける、IT未経験女性向けの学習指導と転職支援サービス「DXクリエイターズ」を知り、受講した。仕事との両立は簡単ではないが「時間や場所にとらわれずに働ける未来のために頑張っている。女性が少なく不安もあるけれど、同じ思いの人へのアドバイスを発信するにも、ITの力は必要だと思う」
経済産業省は2030年に最大79万人のIT人材が不足すると試算。だが、女性は少ない。一般社団法人「情報サービス産業協会」によると、加盟企業の全従業員のうち、女性は24・7%。管理職は8・1%にとどまり、91・9%を占める男性と大きな開きがある。
エンジニア出身でトラント社長の小川直子さんは「女性比率の低さはこの30年、変わっていない。男性社会のまま」と問題視する。プログラミング技術がいらない「ノーコードツール」でシステムをつくり、取引先の業務改善や効率化を担当してもらおうとアパレル、旅行、エステなど他業界から女性を採用。その経験をもとに23年11月から「DXクリエイターズ」を始め、200人超が受講した。
小川さんは間口を広げた狙いを「いろいろな感性が入ってくれば多様性が生まれる。必要とされる人材も、昔はプログラミングが得意な人。今は丁寧に説明でき、ITで生活をどう変えるか考えられる人へと変わった」と語る。未経験で教員から転身した同社の水戸玲樹(れいな)さん(32)も、今や取引先のデジタル化を担う。「ITが分からない相手の状況を理解し、仕事を進められる人材はまだ少ないし、女性が参入しないとIT業界で働く人は増えない」
◆「理数は男性」 偏り
そもそも、偏りは社会に出る前に生まれている。文部科学省によると、理学系の大学生は男子が71・7%で女子は28・3%、工学系も男子83・3%に対し、女子は16・7%だ。小4と中2を対象にした23年の国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2023)では、理数への興味も男子のほうが高い傾向。理数系の職業を望む女子も、男子より少ない=グラフ。
「『ITは男性のもの』『女子は文系』という意識は根強く、指導者も男性が多い。それがITへの興味、理工系への進学、女性IT職の少なさにつながっている」と指摘するのは、NPO法人Waffle(ワッフル)理事長の田中沙弥果さん。同法人は全国の女子中高生に無料でプログラミングを教えるなどし、現状を打開しようとしている。
田中さんは少数者や弱者を取り残さないためにも、職業ジェンダーギャップの解消を訴える。「多数派がつくる製品やサービスには偏りが出る。ITが欠かせない社会で少数派を支えるには、少数派の当事者が携われるようにしなくては」
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