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【経済】カスハラ 企業の対策義務化 厚労省方針 法案提出へ

2024/12/17

就活でのセクハラ防止も

 厚生労働省は16日、全ての企業に対し、顧客らが理不尽な要求をする「カスタマーハラスメント」(カスハラ)から従業員を保護する対策を義務付ける方針を示した。就職活動中の学生へのセクハラ防止策も義務とする。深刻化するハラスメント対策を強化し、安心して働ける職場環境をつくる。来年の通常国会で関連法案提出を目指す。

 ◇ ◇ ◇

 女性活躍推進に向け、女性管理職比率の公表を義務化する。同日あった労働政策審議会の分科会に、それぞれを盛り込んだ報告書案を提出した。月内にまとめる。

 報告書案は、カスハラを(1)顧客や取引先、施設利用者らが行う(2)言動が社会通念上相当な範囲を超える(3)就業環境が害される-の3要素を満たすものと定義。言動の内容や手段から判断し、1回でも該当するとした。

 従業員保護の具体策として、事前にカスハラ対応方針を明確化して周知するとともに、被害に遭った従業員からの相談に適切に対応する体制整備を挙げた。「正当なクレーム」はカスハラではないとも指摘した。

 就活セクハラ防止では、学生と面談する際のルールを事前に定め、被害の相談窓口設置や周知、被害者への謝罪対応を掲げた。

 パワハラを含む職場のハラスメント全般は「行ってはならない」とし、国が規範意識醸成に取り組むよう法律で定める。

 女性活躍推進では、従業員101人以上の企業に対し、管理職に占める女性比率の公表を義務化する。男女の賃金格差の公表は、義務付け対象の企業を現行の301人以上から101人以上に広げる。

    ◇

◆【Q&A】苦情と線引き 定義示す

 厚生労働省が、カスハラ対策を明記した報告書案を審議会に出し、従業員保護を企業に義務付ける方針を示しました。

 Q なぜ問題に。

 A 職場外の第三者が加害者で、社内でのパワハラやセクハラとは違う対応の難しさがあります。法律上の定義がないため、正当な苦情との線引きが難しく、イメージ悪化を恐れる企業側が被害を訴えにくいという事情もあります。

 Q 報告書案の内容は。

 A カスハラを(1)顧客や取引先、施設利用者らが行う(2)言動が社会通念上相当な範囲を超える(3)就業環境が害される-の三つを満たすものと定義しました。企業には防止に向け、対応方針の明確化と周知、相談に適切に対応する体制整備を求めています。

 Q 今後は。

 A 月内にまとまる報告書を踏まえ、政府は来年の通常国会に関連法案を提出する方針です。成立すれば、早ければ2026年にも施行されます。施行までに具体的な定義や対策の内容を定めた指針を策定します。

(メモ)
 カスタマーハラスメント カスタマー(顧客)とハラスメント(嫌がらせ)を組み合わせた造語で、略して「カスハラ」と呼ばれる。顧客や取引先などが立場を利用し、店員や公務員に暴力を振るったり、理不尽な要求をしたりする迷惑行為を指す。交流サイト(SNS)で個人情報を拡散させるなどインターネット上の被害もある。心身の不調から従業員が退職に追い込まれるなど社会問題化した。東京都や北海道で今年、防止条例が成立した。対策を打ち出す企業も増えている。