2024/11/22
試験厳格化、低賃金 受験者数が激減
人材不足 厚労省検討会で対策議論
高齢者や家族の相談に応対し、介護保険のケアプランを作る「ケアマネジャー」(ケアマネ、介護支援専門員)が減少し、現場の危機感が強まっている。高齢化もあり閉鎖や統廃合する事業所が増加。資格試験の受験者数も低迷している。厚生労働省は有識者の検討会で負担軽減策などを論議しているが、深刻な人手不足は介護業界全体の問題。対策の決定打は見えない。 (五十住和樹)
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「まじめに取り組む人ほど疲弊する。利用者の入院手続きなど報酬が付かない業務も行政は『やって当たり前』という姿勢。自分を削って仕事をしている」。東京都内のケアマネ女性(64)はこう嘆く。都内の別のケアマネ女性(49)は「膨大な事務作業に追われ『未来が見えない』と悲観してやめていく。ケアマネが見つからずケアプラン作成に1~2カ月待ちという介護難民も現実にいる」と話した。
6月の検討会では「ケアマネになると賃金が減るから、なりたいと思わないとの声は多い」との指摘が出た。ヘルパーなど介護職はまず法定資格の介護福祉士を取り、ケアマネへとステップアップする人が多い。だが介護労働者でつくる組合の昨年の調査では、在宅介護のケアマネの平均年収は390万円で、訪問介護事業所の管理者の465万円より75万円も低い。同組合の幹部委員は「介護職が将来はケアマネになりたいという動機となる処遇の確保を」と訴えた。
昨年度の厚労省の委託調査では、新たにケアマネを雇えなかった事業所は30・5%。新規採用が困難な理由は、複数回答で(1)賃金・処遇の低さ(2)業務範囲が広い(3)事務負担が大きい-だった。処遇の低さや負担の重さは離職理由にも挙がる。
検討会では、「利用者や家族が何でもケアマネに頼む『何でも屋』になっている」という実態も次々に報告された。同省はケアマネの本来業務を「利用者からの相談対応、関係機関との連絡調整、ケアプラン作成」としている。ただ、救急車への同乗のほか部屋の片付けやごみ出し、買い物、ペットの世話など家事支援をしている人は少なくない=グラフ(上)。
業務範囲の明確化は検討会の大きな論点。同省は「郵便や宅配便の発送、受け取りや代筆・代読などは保険外の有料サービスで」「部屋の片付けなどは生活支援のボランティア団体、預貯金の引き出しなどは別の福祉事業で」と対応例を提示した。だが支援団体がない地域もある。「ケアマネは第一の支援者と位置付け、担った業務を(報酬で)評価すべきだ」との声も出た。
資格試験(実務研修受講試験)の受験要件厳格化がケアマネ不足の元凶との指摘も。「資質や専門性の向上」を狙いに同省は2018年度、受験資格を実質的に看護師や社会福祉士などの法定資格保有者に限り、介護福祉士以外の介護職員を除外した。同年度から受験者数が激減し=グラフ(下)、ケアマネ総数も事業所数も減り続けている。
検討会のメンバーでもある国際医療福祉大大学院の石山麗子教授は「行政や病院、利用者と家族は、ケアマネは何でもやってくれるという感覚を持たないでほしい。受験資格の拡大などケアマネの現状改善につながる施策はすぐに実施すべきだ」と話している。
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