2024/08/26
「オフィス環境で重視」 82%
事務所や工場などの生産現場のトイレをより明るく、美しく、環境を向上させる企業が増えている。温水洗浄便座の導入はもとより、個室や手洗い場など空間を充実させ、従業員に気分よく働いてもらう狙いだ。職場のトイレの最新動向を取材した。 (妹尾聡太)
■仕事に張り
トイレの環境を充実させることは、働きやすさにつながるのだろうか。2021年に完成した三菱UFJ銀行名古屋ビル(名古屋市)では、トイレ内に全身が映る姿見を設置したところ、顧客と対面する銀行員たちから「お客さまと対面する前に身だしなみを整えやすい」との声が上がった。同行総務部調査役の北村拓哉さんは「仕事に張りが出る、といった声もかけてもらった」と胸を張る。
LIXIL(リクシル)の知多物流センター(愛知県知多市)は22~23年にかけて構内のトイレを刷新した。手洗い場の鏡には照明を設置し、営業部門は「女優ミラー」と称する。
改装を担当した物流センターの福井重樹さんは「設備更新と照明を明るくすることの2点を特に重視した。薄暗くてネガティブな印象が持たれていたトイレが変わった」とほほ笑んだ。
キリンビールは今年5月、愛知県清須市の名古屋工場など国内全工場の物流エリアの環境を整備すると発表した。特に注目するのはトイレ。不足しがちなトラックドライバーら物流事業者に定着してもらおうと、まずは12月までにトイレ約110カ所の改修を目指す。担当者は「物流に従事する方々に将来にわたって働いていただくためにも、ジェンダーも考慮した、より快適で働きやすい職場環境整備が急務」と説明した。
■会社に愛着
企業がトイレに着目するのにはワケがある。リクシルが22年に「オフィス環境で重視することは?(複数回答可)」と尋ねたアンケートでは、回答した約千人の82%が「トイレ」を選択。トイレが充実すると仕事の効率アップに影響「する」との回答も71%に達した。
リクシルでトイレ空間の調査・設計に携わる石原雄太さんは「清潔さのほか、1人で落ち着ける空間であることが期待されている」と指摘する。手洗い場の鏡は1人につき1枚、男性の小便器にも仕切りを設けるなど、プライバシー確保に敏感な企業が増えているという。
石原さんはトイレの設備やバリアフリーの充実度合いが「企業やビルの価値に密着し、働く人のエンゲージメント(会社への愛着や貢献しようとの思い)にも影響する」とみている。
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◆個数や衛生面 厚労省が基準
職場のトイレについては、基準が定められている。労働衛生基準など厚生労働省の省令や規則では、数なども決められている。
例えば、男性用大便所は男性60人以内ごとに1個以上、小便所は男性30人以内ごとに1個以上、女性用便所は20人以内ごとに1個以上と定められている。
「暗い」「汚い」「臭い」トイレは論外だ。事務所衛生基準規則は第17条で「事業者は、便所を清潔に保ち、汚物を適当に処理しなければならない」と定めている。
2021年12月には「職場における労働衛生基準」が改正・施行された。トイレを男性用と女性用に区別して設置するという原則は維持しつつ、男女用を区別しない「独立個室型のトイレ」について初めて定義し、プライバシーの確保などについて触れた。
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