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【地域経済】農福連携 働きがいに 岐阜・シイタケ栽培 35人勤務、人材確保と両立

2024/07/10

 農業で働くことを通じて、障害者の社会参画を促す「農福連携」の取り組みが全国で広がっている。農業分野から見れば働き手の確保ができ、福祉分野から見れば障害者の働く場所の拡充につながる。国や東海農政局、東海地方の自治体も推進に力を入れている。

 肉厚に育ったシイタケを、慣れた手つきで次々と収穫していく。岐阜県笠松町のシイタケ栽培施設では、知的や精神、身体障害のある35人が働く。収穫作業中の中島翔都さん(21)が手を止め、「カサが閉じているうちはうまみがある」と説明する。特別支援学校を卒業後、働き始めて3年。「安心・安全なシイタケを届けることが楽しい。達成感がある」と充実感をにじませる。

 栽培施設は三重県いなべ市の農業法人フジタの委託を受け、就労継続支援A型事業所「就労さぽーと」(岐阜市)が運営する。利用者は午前10時~午後3時半の間、個性や体調に合わせて栽培や収穫、袋詰めを担当する。

 就労さぽーとの藤田泰三社長(48)は「障害者だからできないという考えはない。誰でも仕事に対する好不調の波はある。その波が一般より大きいだけ」と話す。

 農福連携に乗り出したきっかけは、藤田社長の恩師で、現在はフジタで栽培指導者を務める土岐まゆみさん(64)から「障害のある教え子を雇用してほしい」と相談されたこと。フジタは2011年に就労継続支援B型として認定を受け、22年に国の支援事業を活用して笠松町に栽培施設を新設した。

 東海農政局によると、農福連携に取り組む農業法人や企業は、全国で集計すると、19年度末の4117件から、22年度末には6343件に増加している。政府は6月、農福連携の事業者数を30年度までに1万2千以上に増やす目標を盛り込んだ新たな推進ビジョンを決定しており、障害者の技術取得や生産施設の設備に補助金を支給するなどして後押しする。

 愛知県は本年度から相談窓口で、農業者と福祉事業所がマッチングできるよう支援の強化を打ち出している。岐阜県も農福連携の認知度向上を目指して関連組織を増強しており、東海農政局の担当者は「周知活動に取り組んでいきたい」と話した。(岸友里)

シイタケを収穫する中島さん=岐阜県笠松町で
シイタケを収穫する中島さん=岐阜県笠松町で