2024/05/10
厚生労働省が9日公表した3月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動を考慮した1人当たりの実質賃金は前年同月から2・5%減った。マイナスは24カ月連続となり、リーマン・ショックなどにより景気が低迷していた時期を超え、過去最長を更新した。
名目賃金に相当する現金給与総額は27カ月連続のプラスだが、0・6%増の30万1193円にとどまった。円安や原油高を背景とする物価高騰に賃金上昇が追い付かない状況が2年に及び、家計悪化に歯止めがかからない。
2024年の春闘では大企業を中心に賃上げが相次ぎ、統計調査には早ければ4月分から反映され始めるとみられる。ただ、財務省の調査では中堅・中小企業での5%以上の賃上げは24・4%と限定的だった。円安進行や原油高で輸入品、エネルギーの価格などが上がる中、実質賃金がプラスに転じるタイミングは見通せない。
3月の消費者物価指数が3・1%上昇し、名目賃金の伸びとの差し引きで実質賃金はマイナスとなった。マイナス期間は、リーマン・ショック前後の07年9月~09年7月の23カ月を超え、比較可能な1991年以降で最長となった。
3月分の現金給与総額の内訳は、基本給を中心とした所定内給与が1・7%増の25万9531円、残業代などの所定外給与が1・5%減の1万9703円だった。主にボーナスが占める「特別に支払われた給与」は9・4%減の2万1959円で、総額の押し下げ要因となった。
総額を主要産業別で見ると、金融・保険業で7・2%の大幅増。生活関連サービス5・4%増、情報通信業4・9%増と続く。一方で、不動産・物品賃貸業は2・2%減。飲食サービス業は8・0%減、鉱業・採石業は11・6%減と大きく落ち込んだ。
安定的プラス 年末か
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストの話 賃上げの影響が表れるのは少し先で、電気とガス代の価格を抑える政府の補助金が廃止されることもあり、実質賃金のマイナスは当分続くだろう。安定的にプラスに転じるのは今年末ごろではないか。輸入物価高騰による物価高が長く続いた影響は大きく、国民の消費マインドはすぐには上向かない。政権が経営側に働きかける「官製春闘」ではなく、企業が持続可能的に賃上げできる環境整備が必要。人材の流動性を高め、リスキリング(学び直し)の促進などもして労働生産性を向上するべきだ。為替の安定のためにはこれ以上の円安進行は避けるべきで、日銀には追加的な利上げが求められる。
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