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【生活】ワーク・ライフ・地域 つなげて理想の働き方を 協同労働に注目

2024/02/26

組合法きっかけ 自ら出資し経営 社会課題解決に貢献

 働く人の約4割が不安定な非正規雇用で、社会機能の維持に欠かせないエッセンシャルワーカーの待遇の悪さが課題になっている。何のために働くのかが改めて問われる中、「協同労働」という働き方が注目されている。解説書を出版した研究者によると、ワーク(労働)とライフ(人生)とコミュニティー(地域)の三つをつなげる働き方だという。実例も交えて、この新しい働き方の可能性を考える。 (大森雅弥)

 ◇ ◇ ◇

 「働くというとき、私たちは雇われて働くというのが当たり前と思っている。そうではなく自分たちで仕事をつくっていくのが協同労働」。金城学院大の朝倉美江教授は、関西学院大の柴田学准教授とともに協同労働を解説するブックレットを執筆した。

 その中で「自分たちの仕事」を見いだすヒントとして、次のように問いかける。(1)やりたいこと・好きなことは何か(2)誰と実現するか(3)どういう理想のコミュニティーを目指すか(4)どんな方法で実現するか-。ワークシート=図参照=に書き込みながら、働き方を考えてもらうようにした。

 協同労働は2022年に施行された労働者協同組合法がきっかけとなり、広く知られるようになった。働く人たちが平等に出資して組合をつくり、経営も協同で担う。朝倉教授は「社会課題の解決にはNPOなどもあるが、メンバーが平等に出資するという点で寄り合いやすく、経営意識も高くなるだろう」と話す。

 ただ、ブックレットでは組合のつくり方にも触れているが、それが主題ではない。「組合という形でなくても、いろんな人と一緒に自分が属するコミュニティーの課題を解決しようとすることが大事だ」

 その具体例として紹介したのが、双子などの多胎児がいる家庭を支援する一般社団法人「あいち多胎ネット」(名古屋市)で副代表を務めた松本彩月(さつき)さん(44)の経験だ。10年に双子の女児を出産したことを契機に活動を始めた。

 授乳は一番多いときで1日8回で、それが2人分。夜泣きも2倍。細切れでしか寝られない日々が2カ月ほど続いた。ただ、大変な時期が過ぎると、自分はそれでも恵まれていたと感じるようになった。里帰り出産で両親や妹に助けてもらい、夫の両親の手も借りられた。

 そういった助けがない人の支援はあるのか-。大学卒業の際、大学院への進学を考えたこともあり、14年に金城学院大大学院へ進んだ。多胎育児支援の研究を始めると、先行研究がないことを知り、各地の実態を調べた。そこで出合ったのが、この法人の前身の団体で、19年に加入した。

 法人は行政などからの委託を受け、電話相談、健診・予防接種への同行、妊娠教室など多胎児家庭の支援事業に取り組んできた。制度を調べてきた経験を生かし、松本さんは助成金の申請や広報を担当。自身の研究を続ける傍ら、法人のメンバーとして多胎児家族の支援にも力を尽くしてきた。

 大学の教員となった現在は、法人の活動の一線からは退いたが、「本業と並行して自分の好きな分野でパラレルな働き方、キャリアができた」と言う。

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 ブックレット「つながって働く、生きる、地域をつくる~みんなの幸せを協同で」はA5判、70ページ、500円。申し込みは「協同ではたらくネットワークあいち」=電052(222)3850=へ。