中日新聞CHUNICHI WEB

就職・転職ニュース

  • 無料会員登録
  • マイページ

【社会】23年賃上げ 過去最大9437円

2023/11/29

物価高騰 実質はマイナス

 厚生労働省が28日発表した2023年の賃金引き上げ実態調査によると、基本給など月額所定内賃金の全産業の平均引き上げ額は、前年より3903円高い9437円だった。増加率は3・2%で、いずれも比較可能な1999年以降で過去最大となった。今年7~8月に調査し、有効回答があった従業員100人以上の1901社を集計した。

 厚労省によると、新型コロナウイルス禍からの経済回復が押し上げ要因となった。ただ同省の毎月勤労統計調査では、物価の変動を加味した実質賃金が今年9月まで18カ月連続マイナスで、家計の苦しい状況が続く。

 物価高騰の中で働き手確保のため賃上げを迫られた企業も多かったとみられ、年内に賃上げを実施、または予定する企業は前年から3・4ポイント増の89・1%だった。増加は2年連続。

 業種別で割合が高いのは建設業(99・7%)、製造業(97・4%)など。一方で運輸業・郵便業は71・0%、宿泊・飲食サービス業も77・4%にとどまった。

 勤続年数や年齢に応じた定期昇給制度がある企業のうち、一般職員の賃金水準を引き上げるベースアップ(ベア)を実施、または予定している企業の割合は49・5%。前年より19・6ポイント伸びた。

 賃金改定で最も重視したのは「企業の業績」が最多の36・0%だったが、前年より4・0ポイント減。増加したのは「労働力の確保・定着」(16・1%)「雇用の維持」(11・6%)で、「物価の動向」も前年から6・6ポイント上昇して7・9%だった。

    ◇

◆中小の18.4% 価格転嫁できず

 中小企業庁は28日、10~11月に実施した中小企業の価格転嫁に関する調査結果を発表した。「全く転嫁できていない」と答えた企業は18・4%で、4~5月に実施した前回調査から3・0ポイント低下した。

 今回の結果を踏まえ、同庁は来年1月に発注側の大企業の対応を評価した社名リストを公表する方針。価格交渉しやすい環境づくりを後押しし、中小企業の賃上げにつなげる狙いがある。

 約30万社にアンケートを配布し、約3万5千社から回答を得た。「コストが上昇せず、価格転嫁は不要」と答えた企業は16・2%で前回調査の8・4%から倍増した。

 価格交渉をしたにもかかわらず全く転嫁できなかった企業の割合は、トラック運送が29・2%で最多だった。放送コンテンツが25・0%、通信が23・9%と続いた。こうした業種ではコストに占める人件費の割合が高く、受注側に個人事業主が多い傾向があるという。