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【くらし】はたらく 人生100年時代 自分の強み見つけ「一歩」を

2023/11/24

就業支援の取り組み 活況

 働きたいと思っても、「どんな仕事を選べばよいか分からない」と一歩を踏み出せないシニアもいるのでは。そんな人たち向けに、自己分析などを活用した就業支援の取り組みが各地で盛況だ。長年の経験から自分の強みやスキルを見いだし、求職活動に役立ててもらう狙いがある。(川合道子)

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 10月下旬、名古屋市で開かれた「高齢者生きがいノビノビ就業フェア」。簡単なテストで体力や処理能力を測定し、仕事の適性などを診断するコーナーは、当初の定員を超える50~80代の約100人でにぎわった。

 半世紀にわたって主に技術者として製薬会社やIT企業などに勤め、昨年に退職した中島幹男さん(69)=同市=は「ボランティアをして過ごそうと思っていたが、やっぱり仕事がしたくなって」と申し込んだ。テストでは一定時間に椅子の立ち座りを何回繰り返せるかや細かな部品の組み立て、計算や文章読解などに挑戦。結果リポートを受け取ると、「体力は多少衰えてきたが、計算や手先を動かすことは得意。まだまだ仕事を通じて社会に貢献したい」と声を弾ませた。

 イベントは、名古屋市高齢者就業支援センターが企画。60歳を過ぎて働く意欲があっても、高齢の自分にどんな仕事が合うのか分からず、尻込みしている人が多いという。金田雄介センター長は「自分の適性を知り、職探しにつなげてもらえたら」と意図を明かす。

 求人検索サイトを運営するインディード(東京)は昨年、シニアを対象にした「キャリア棚卸(たなおろし)&発見シート」を開発した。仕事やプライベートでの経験を振り返りながら、自分の長所やスキルに気付き、求職活動に役立ててもらう試み。インターネットで無料公開するほか、希望する自治体に提供。シートを活用したセミナーも開かれている。

 千葉県の男性(65)は今年初め、40年以上勤めた金融機関を退職するのを前にシートに取り組んだ。「転職することなく、会社が敷いたレールに乗って働いてきた。じっくり自分と向き合ったのは、大学卒業以来だった」と振り返る。

 顧客から感謝された経験などを書き出し、なぜ喜ばれたのかを考えるうち、相手の話に耳を傾けて寄り添える点などが自分の強みと感じた。「年だからと事務作業を選ぶのではなく、人に接する仕事がしたい」。さまざまな求人に応募する中で、希望の相談業務がある事業所に採用が決まり、今春から週3日ほど働く。「自分のやりたいことを整理し、面接で伝えられた。今後の生き方を考えるきっかけにもなった」と話す。

 シートを共同開発した「定年1年目の教科書」(日本能率協会マネジメントセンター)の著者で、セカンドキャリアコンサルタントの高橋伸典さん(66)は、職探しのポイントや心構えとして「自分の強みを明確にし、それを生かせる仕事を探すこと」などを紹介=表。シニアを積極採用する企業ばかりではないことを踏まえ、「あきらめずに求職活動を続けること」も挙げる。

 「シニア世代は現役時代に比べ、がむしゃらに働く必要はない。もし『きれい好き』な人であれば、トイレ掃除などの仕事に就くのも素晴らしいこと。強みを生かし、幸せな就職を目指してほしい」

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