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就活「オワハラ」 巧妙化 強要避け 学生囲い込み

2023/05/23

頻繁に懇親会 長時間の研修

 企業が採用の内定を出した学生に就職活動を終えるよう迫る「オワハラ」が巧妙化している。研修や懇親会の名目で学生を頻繁に呼び出して拘束し、就活の時間を実質的に奪う動きが目立つ。就活に詳しい大学職業指導研究会の池田浩二会長は「オワハラが問題視される中、直接的な強要を避けて遠回しに囲い込む例が増えている」と話す。

 「内定者向けの講習を受けてもらうので、料金として一万円を振り込んでください」。東京都内の男子大学生は四月、内定先の企業からこんなメールを受け取った。資格取得が必要で週に一回、三~四時間の講習が秋まで続く内容だった。

 料金の詳しい説明はなかった。「内定を辞退した場合は返金されず、違約金の請求もあり得るのでは」と思ったが、内定承諾書を書いた手前、人事担当者に問い合わせることはできなかった。

 結局、直後に志望度が高い企業から内定を得られる見通しとなり、講習は断ったが、選考が大詰めの時期に重なったらと思うと、ぞっとした。

 内閣府によると、オワハラを受けた学生の割合は二〇二二年度に10・9%。調査を始めた一五年度の19・9%から低下が続いた後、二〇年度の9・0%を境に下げ止まりの傾向がうかがえる。

 二二年度は「懇親会などが頻繁に開かれ、必ず出席するように求められた」「長時間の研修があり他社の選考を受けられなくなった」との訴えが増えたのが特徴だ。一方で「早めに内々定を受ける旨の返答をしなければ取り消すと言われた」など、あからさまな言動は減った。

 池田氏は「学生にとって就活は初めての(経験の)連続で、違和感があっても受け入れるケースがある。おかしいと思ったら家族や知人に相談するべきだ」と強調。企業とのトラブルを避けるためにも「入社の可能性が無くなればすぐに内定を辞退することが大切だ」と指摘している。

【オワハラ】 企業が新卒採用で内定を出した学生に、他の企業への就職活動をやめるよう迫る行為。「就活終われ」と、英語で嫌がらせを意味する「harassment(ハラスメント)」を組み合わせた略語。学生優位の売り手市場が続き、企業が優秀な人材の囲い込みに焦っていることが背景にある。政府は「学生の職業選択の自由を妨げる」としてオワハラ防止の徹底を求めている。