2022/12/10
春日井・就労移行支援事業所「ふらっぷ」
フードバンク活動への企業からの防災備蓄食品の寄付を、障害者らの仕事の機会に結びつけようと、食品の引き取りから配布、寄付企業の備蓄品補充までを障害者らが担う仕組みづくりが進んでいる。備蓄用のパンを製造する就労作業所と企業をつないだ、就労移行支援事業所「ふらっぷ」(春日井市中央通一)の藤井貴之所長(38)は「取り組みが広がってくれれば」と願う。(磯嶋康平)
きっかけは今年七月、工業部品メーカー三ツ知(同市牛山町)からの一本の電話。「入れ替えに伴う不要な防災備蓄用品を寄付したい」との申し出だった。
ふらっぷではこれまでもフードバンクを行ってきたが、今回は同社側との打ち合わせの中で、更新する備蓄品の調達に手間がかかるという話を聞いた。備蓄品を手がける事業者が少ないためだ。
「補充までフォローすれば、企業にとっては寄付しやすくなるのでは」。藤井さんはそんな思いから、社会福祉法人「名古屋ライトハウス」(名古屋市)が運営する作業所を、同社に紹介した。
同法人の作業所では、障害のある人らが長期保存できるパンを製造している。同様の施設の増加や、新型コロナウイルス禍での不景気などで作業所の収益確保が難しくなっているといい、取引先が増えるのは大きなメリットだ。藤井さんは「保存食を作っている作業所という強みを生かしつつ、雇用や収益の創出につなげられる」と話す。
ふらっぷは働く意欲のある障害者らの就労を支援している。寄付される保存食品の引き取りや補充品の配送、企業との電話連絡などはふらっぷの利用者が担当し、就労に向けたトレーニングの側面もある。
就労体験となると、企業側は「どんな人が来るのか」「何かあったらどうするのか」と構えてしまい、調整にも時間を要することが多いという。しかしフードバンクはあくまでボランティア活動のため、企業側も受け入れやすい。「就労体験の前段階のような経験となり、利用者の自信につながる」と藤井さん。
企業、障害者の双方が「Win Win」の関係を目指す取り組みは、まだ始まったばかり。藤井さんは「市内外の多くの企業とつながって支援を広げたい。他の地域でもこうした仕組みのフードバンクが広がってくれれば」と期待する。
ふらっぷは十日に、春日井市中央台二の東部市民センターで開かれる市民環境フォーラムで、今回の取り組みを紹介するパネル展示を行う。
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