2021/07/17
オールウェーブ 51%が「不要」
まつエク 50%が「ニーズ高い」
美容師の国家試験科目の見直しを厚生労働省が進めている。実技に、1960年代ごろに流行したパーマ「オールウェーブセッティング」が今もある一方、近年人気の「まつげエクステンション(まつエク)」はないなど、内容が時代に合っていないとの声が現場で高まっているためだ。来年度までには結論を出す方針で、業界は行方を見守っている。
「働き始めてから一度もかけたことがないですね」。東京都文京区で美容室を営む男性(45)は、約二十年前に国家試験を受験する際に「オールウェーブ」を猛練習したが、美容師になって客から依頼された経験はない。
現在主流のパーマ液ではなく髪全体にローションを塗り、くしや指を使って波打たせる技術。男性は試験前の二カ月間を苦手だったこの髪形の練習に費やした。だが今は「働いた時にもっと役立つスキルがある」と実感している。専門学校などの授業では「他のパーマ技術やカラーリングなどに多くの時間を使うべきだ」と指摘した。
現行試験は、筆記とカットの実技に加え、パーマ技術として「オールウェーブ」か、棒状のロッドで髪を巻く「ワインディング」のどちらかが出題される。政府の規制改革推進会議の作業部会で昨年七月、内容見直しを求める意見があり、厚労省が今年一月に検討会を設置した。
検討会による美容師アンケートでは「オールウェーブ」の要否について「国家試験で問う必要は低い」との回答が51・1%に上った。人工まつげを付ける「まつエク」の意見を求める設問(複数回答)では50・5%が「現場のニーズが高く、学生がより丁寧に学べる環境を目指してほしい」と希望した。
三月には検討会の方針がまとまり、「まつエク」の実技試験を導入するか結論を本年度内に出すほか、「オールウェーブ」を今後も試験科目とするか二〇二三年度の早期に整理することが決定。ヘアカラーなど他の実技の要否も調査する。
業界団体も試験科目見直しを歓迎し厚労省と協力する。美容師のなり手不足や早期離職といった課題の改善につなげたいためだ。日本美容サロン協議会(東京)などによると、新規免許取得者は減少傾向で二一年度は一万九千九百七十五人。近年は新人美容師の半数が三年で業界を離れるという。
免許取得後、店舗でのアシスタントなどとして数年間の下積みをするのが通例で、この期間に辞めてしまう人も多い。試験科目見直しに伴い専門学校で学ぶ技術が今より実用的なものになれば、少しでも早く現場で活躍できる可能性があり、やりがいにもつながると期待される。
協議会の岩田卓郎副理事長(48)は「日本の美容技術は海外から高く評価されている。業界を活性化し、世界に広げていきたい」と強調する。
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