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【暮らし】男性育休 充実の肝は「対話」

2022/06/17

上司と … 家庭の事情も共有
パートナーと … 希望や悩み言葉に

 育児・介護休業法の改正で10月から産後パパ育休(男性版産休)が始まるなど、男性が育休を取りやすい環境が整いつつある。ただ、実際に育休を取った男性からは後悔や反省の声も出ている。取得前・復職前・復職後のタイミングで、上司や妻・パートナーと念入りにコミュニケーションを取ることが、より充実した育休の鍵となる。 (今川綾音)

 ◇ ◇ ◇

 「復職前に共働きのやりくりの事情を上司に伝えなかったせいで、忙しい役になってしまった」「復職後の働き方について、妻と話し合っておくべきだった」

 育休を取った男性たちが画面越しに「失敗談」を語る。子育て中の父親ら約二百人でつくるグループ「パパ育コミュ」が今春に開いたオンラインの会。七人が体験を伝え、これから育休を取得する男性らの質問に答えた。アドバイスの一部を場面ごとに紹介する。

 まず職場とのやりとり。男性の部下の育休取得を経験している上司はまだ少なく、育休を取る男性に対する嫌がらせ「パタニティーハラスメント(パタハラ)」が起きることもある。「事前に人事担当に制度を問い合わせておくと、上司への相談時にも力になる」

 取得を申請する際、詳しい理由を伝える法的な義務はない。ただ、なるべく包み隠さず伝えた方が円滑に事が運ぶ。「妻が里帰り出産できないので産後一カ月サポートしたい」「上の子の世話があるので最低三カ月は取りたい」など期間と目的を伝えると、上司も調整しやすい。

 復職前には、必ず働き方を上司と打ち合わせよう。家庭の事情や、どのように働きたいかを伝える。特に育休前より抑えた働き方をしたい場合は、育休中からその意思を伝えておくと、上司も心積もりができる。

 復職後、希望する働き方とのずれが生じることも。例えば、家庭の事情で仕事をセーブしたいのに、上司が「休んでリフレッシュしたことだし、またバリバリ働く気だろう」と早合点し、育休前と変わらない働き方を求められる場合だ。「対話を重ねて事情を知ってもらうことが大事」

 妻やパートナーとは、折に触れて互いの考えを伝え合うことが重要だ。取得前には、育休中の目標を決めよう。「一番大変な産後を二人でスタートする」「共働きなので、互いにワンオペ(一人で育児)ができるようになる」など。

 復職前は、互いが望む働き方や子どもとの関わり方を踏まえた話し合いが欠かせない。共働きの場合、園の送迎を分担するため、働く時間をずらしたり、年間予定を照らし合わせて調整したりすることが必要。より長く家庭で過ごす側が一人で家事育児を抱え込まない工夫もいる。日常的な分担に加え、「週二日は午後六時までに帰宅する」などの線引きをしておきたい。

 起こりがちなのが、対話不足によるすれ違い。夫は「妻の負担減のために働き方をセーブしたい」と考えていても、妻は「仕事に重心を置いてほしい」と望んでいるケースもあれば、その逆も。「自分はこういう働き方をしようと思うけど、どう思う?」「あなたはどうしたい?」と言葉にして伝え合うことが肝要だ。

 男性の育休取得推進講座などを手掛けるNPO法人「ファザーリング・ジャパン」(東京)理事の塚越学さんは「仕事でよりよい結果を出すために、今は家庭の事情を職場とも共有する時代」と指摘。「育休中に病児保育や第三者サービスなど子育ての態勢を手厚く整えて、そのマネジメントを夫婦で担えるようになってほしい」と話す。