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【地域経済】トヨタ 社会人採用5割へ 新卒中心から転換

2022/05/27

自動運転やEV対応

 トヨタ自動車は、総合職にあたる事技職の採用活動で、社会人経験のあるキャリア採用の割合を五割に引き上げる。従来型の新卒中心から即戦力となる社会人経験者の採用を強化することで、自動運転をはじめとするソフトウエア領域や電動化への対応を加速させる狙いがある。

 トヨタは二〇一九年度から、知識や技術が豊富な人材の獲得に向けてキャリア採用を強化。新卒採用が中心だった一九年度以前はキャリア採用は一割ほどにとどまったが、二一年度は事技職で採用した五百四十三人のうち、二百十三人と四割にまで比率が上がった。今後も割合を増やし、二二年度以降に五割にする。

 キャリア採用強化の一環で、現役社員がスキルのある知人を自社へ紹介する「リファラル採用」と呼ばれる手法も導入。本格化させた昨年四月以降、十五人ほどが入社した実績があり、専門人材の確保に向けて現役社員への周知を進める。

 自動車業界はインターネットにつながる車や自動運転の進化、今後の電気自動車(EV)への転換などでソフトウエア領域の重要性が高まっている。他業種からのEV参入も相次ぎ、専門知識を備える人材の獲得競争は年々激化している。

    ◇

◆社員が即戦力人材勧誘
◆アプリを活用 報奨金も

 トヨタ自動車が社会人経験者のキャリア採用を強化し始めた。その一環で導入した「リファラル採用」は、専門人材を即戦力で雇いやすい利点がある。社員の協力が鍵となるだけに、スマートフォンで気軽に勧誘できるアプリや報奨金制度も新たに設けた。

 トヨタのキャリア採用の求人職種数は常時、二百前後にも上る。社員向けのリファラル採用の専用アプリには「自動運転を見据えた国内モビリティサービス企画」「次世代電池の研究開発」など専門性の高い求人が多く掲載されている。

 求人は多岐にわたるため応募が集まりにくい職種も。そこで二〇二〇年からリファラル採用を始めた。仕組みは、まず社員が募集職種の適性がありそうな知人に声を掛ける。知人が応募する気になれば、社員がその知人の紹介文を会社へ提出。そこから一般的な面接などの選考が始まる。

 昨年四月にはリファラル採用の支援を手がける企業「マイリファー」(東京)の専用アプリを導入。従来はトヨタホームページに求人を掲載するだけだったが、アプリなら募集職種が社員のスマホですぐ見られる上、求人情報をQRコードで簡単に知人に転送できるため勧誘しやすくなった。

 アプリ導入前の一年間は五人ほどの採用にとどまったが、導入後は十五人ほどに増えた。キャリア採用で入社した社員がかつての勤務先の同僚を紹介したり大学時代や趣味の友人を誘ったりするケースが多い。業界の変革が進む中、外部からの人材登用による社内風土改革への期待も高まる。

 人事部の児玉あおい主任は「今はソフトウエアの人材募集を強化している」と話す。入社から一定期間経過すると、紹介した社員に報奨金として数万円を支給する制度も昨年十一月に開始。人事部の小河原由梨さんは「職場とのミスマッチがなくなり、社員の定着にもつながる」と手応えを語る。(河北彬光)

【リファラル採用】
リファラルは紹介や推薦を意味する英語。社員が優秀な知人を自社に紹介する採用方式。縁故採用とは異なり、一般的な選考を経て採用が決まる。米国では主流の採用方式で、国内でも2015年ごろから導入企業が増え始めた。「マイリファー」によると、導入済み・予定の国内企業は15年に20%だったが20年は79%に。大手では博報堂や富士通、TDKなどが導入している。

トヨタが社員へ利用を促している「リファラル採用」のスマートフォンアプリ
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