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【地域経済】中部発 人材育成/情報を分析→製品やサービス向上に応用

2022/03/26

データサイエンティスト 長期就業体験始まる
中電子会社 昨年末から

 企業が持つ顧客情報などのデータを分析し、新しい製品づくりやサービス向上に生かす人材「データサイエンティスト」の育成を、中部電力の子会社が始めた。中部地方では専門知識を持つ人材が、専門会社の多い関東、関西へと流出しがちで、育成から企業の現場での実践までを一手に担う考えだ。(酒井博章)

 中電は昨年二月、データ分析を手掛ける子会社「TSUNAGU Community Analytics(ツナグ・コミュニティー・アナリティクス、TCA)」(名古屋市)を設立した。世界的なコンサルティング会社「アクセンチュア」の日本法人が協力し、中電グループ向けのデータ分析に取り組んでいる。

 三月中旬、名古屋・栄のTCAオフィスでは、南山大理工学部三年で、データサイエンスを学ぶ鈴木翔貴さん(21)が、パソコンで中電が持つ水力発電所のデータに向き合っていた。ダムの水位や放流した水が次のダムまでに行き着く時間などのデータを分析し、水力発電の発電量を増大させるために運転の仕方を改良できるかを検討する。

 隣にはデータ分析を本職とするTCAの社員が付き、行き詰まった時などにアドバイスをした。鈴木さんは「企業の生データを扱いながら学べる機会はない」と目を輝かせた。

 デジタル化で、企業が持つデータのほかにも、経済や気象などの膨大なデータがインターネットで公開されている。しかし、データから価値を引き出せる専門人材は不足しており、製品やサービス向上などに生かしきれていない。TCAは昨年末から、大学生向けに半年に及ぶ長期インターン(就業体験)を始めた。

 地元の学生ベンチャーを通じ参加学生を募集したところ、鈴木さんのほか、南山大一年生と名古屋工業大大学院一年生の計三人が応募。時給をもらいながら週一、二日のペースでデータサイエンスを学ぶ。

 担当するTCA企画ユニット長の小林豊さんは「データサイエンスは、企業や社会の課題解決につながる。しかし、中部で学生時代から触れられる場はほとんどない。就業体験を通じて中部発の若手の人材を輩出したい」と意気込む。

【データサイエンス】 統計や人工知能(AI)、データ分析などを駆使し、課題解決に導く知見や、価値を引き出す学問。製品開発やマーケティング、医療、教育など、さまざまな分野で応用されている。2017年に滋賀大に全国初のデータサイエンス学部ができて以降、力を入れる大学が増えている。

マンツーマン指導で就業体験をする鈴木さん(左)=名古屋市中区で
マンツーマン指導で就業体験をする鈴木さん(左)=名古屋市中区で