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【社会】知る 防ぐ 新型コロナ/コロナ労災 請求2244件

2021/03/15

中部6県「実態より少ない可能性」

 職場などで新型コロナウイルスに感染し労災認定を請求した件数が、中部六県で二千二百四十四件(一月末時点)に上ることが、各労働局への取材で分かった。うち八割が認定されていた。ただ、感染者が急増する中、コロナ労災がまだ労働者に十分知られていない可能性があると支援団体は指摘。さらなる周知の必要性を訴える。(今村節)

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 各県の労働局によると、請求は愛知千八十五件、岐阜三百七十一件、三重二百六十五件、長野百九十二件、福井七十五件、滋賀二百五十六件。うち認定は愛知八百九件(74・6%)、岐阜三百十七件(85・4%)、三重二百二十五件(84・9%)、長野百七十四件(90・6%)、福井六十五件(86・7%)、滋賀百八十七件(73・0%)だった。

 六県の請求件数は二〇一九年度はゼロだったが、二〇年度は計七百五十七件。二一年度は一月末時点で千四百八十七件と、前年度の約二倍に上る。各労働局の担当者は「昨年夏から急増した。(第六波で)さらに増える可能性がある」(愛知、三重)などとみる。

 ただ、二一年度の各地の感染者数はさらに大きく上回るペースで増えている。愛知県の場合、一月末時点で既に約十四万人に達し、二〇年度(約二万七千人)の五倍。一方で職場感染の実態はよく分かっていない。また、請求の職種別の内訳を明らかにした岐阜県では、介護分野の労働者を含む「医療従事者」が、三分の二を占めていた。

 労災申請の支援団体「名古屋労災職業病研究会」(名古屋市)の相談員、成田博厚さん(49)は「感染実態より労災申請は少ないと思う。特に医療・介護以外の職場では認知度が低い。『業務上でコロナ感染した場合は労災保険が適用される』と一層周知するべきだ」と話している。

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◆後遺症患者の支援課題

 新型コロナウイルスに感染して急性期の症状がなくなった後も、倦怠(けんたい)感や嗅覚障害などが続く後遺症。体の不調を抱え、療養や休業をせざるを得ない労働者をどう支援するかは課題だ。

 職場感染したとみられる愛知県内の介護職の七十代女性は、強い倦怠感や関節痛に苦しむ。一昨年の夏以降、職場復帰できていないという。「体がすっかり変わってしまった」。労災認定を受け治療費の自己負担はなく、休業補償を受けているが「もし労災を打ち切られたら」と不安を語る。

 愛知県大府市や名古屋市の後遺症外来で治療を続ける「柊(ひいらぎ)みみはなのどクリニック」の内藤孝司院長(53)は「全体の感染者が増えた分、職場感染とみられるケースも増えている」と話す。後遺症患者の職種は教員や事務職、営業などさまざま。漢方薬の処方などで治療するが、短くて三カ月。一年以上の場合もある。

 コロナ後遺症を巡っては二月、厚生労働省が「療養や休業が必要と認められる場合には、労災保険給付の対象となることに留意すること」などと都道府県労働局長に通知。労災の対象になることを明確化した。

新型コロナでも労災が受けられることを示す張り紙=名古屋市東区の名古屋北労働基準監督署で
新型コロナでも労災が受けられることを示す張り紙=名古屋市東区の名古屋北労働基準監督署で