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【社会】全国大学アンケート 理工系に女子学生増えないのは…

2021/02/28

「性差による先入観影響」76%

 理工系分野で学ぶ女子の現状について、育成に積極的な全国の大学を対象に、共同通信はアンケートを実施した。回答した四十六大学のこうした分野での二〇二一年度入学者に占める女子割合は、五年前と比べて大きな変化は見られず、増えない要因として、76%が「女子は理系が苦手」などのジェンダーバイアス(性別に基づく思い込み)が影響したと答えた。

 IT社会の進展などでSTEM分野(科学、技術、工学、数学)の人材が求められる中、「リケジョ」の育成が課題となっている。見えない壁が女子の選択肢を狭めるだけでなく、人材獲得や研究開発遅れを危惧する声が上がった。

 経済協力開発機構(OECD)が加盟国の大学入学者に占める女性比を分野別に調べると、日本は「自然科学・数学・統計学」27%、「工学・製造・建築」16%で最下位。政府は二二年度にも実態調査し、STEM人材育成に本格的に乗り出す。

 アンケートは一、二月に実施。〇六~二一年度に、文部科学省または科学技術振興機構の、女子中高生の理系への進路選択を支援する事業に採択された五十二大学を対象とした。

 五年前と比べた入学者の女子比は「0・1ポイント以上5ポイント未満の増加」が54%で最多。「0・1ポイント以上5ポイント未満の減少」が28%、「変化なし、0・1ポイント未満の増減」が9%。

 男女比が偏ることへの懸念(複数回答)は、女性の視点などを生かした「多様な研究開発の遅れ」67%が最多。「理系分野での人材不足」39%、「民間企業の国際競争力低下」37%が続いた。

 必要な対応策(複数回答)は「女性の働きやすさ整備とロールモデル育成」85%、「学校教育や家庭でのジェンダーバイアス解消」74%、「職業選択について幅広い情報提供やキャリア支援」70%に、回答が集中した。

 「雇用制度などあらゆるシステムをジェンダー視点で改良することが必要」(信州大)、「多様で柔軟な社会へ転換することが必要」(京大)など、幅広い取り組みを求める声も相次いだ。

(メモ)
 ジェンダーバイアス 性差に対する思い込み。「男は仕事、女は家庭」「女は理系が弱い」「ドメスティックバイオレンスをするのは男」など、根拠はないが、家庭や職場での役割分担、政策、スポーツと、あらゆる分野に影響する。所得などの経済格差や差別につながる恐れがある。昨年2月、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(当時)が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言し、国内外から「偏見だ」と批判を受けて会長を辞任する事態となった。