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「安い」を追う/給与 アベノミクスでも… 正社員増 格差拡大

2022/02/08

中小と非正規、賃金伸び悩み

 「官製春闘」など賃上げに焦点が当たったアベノミクスだが、北見式賃金研究所(名古屋市)所長の北見昌朗さんは「正社員の人数が増えたことが特筆すべき点だった」と評価する。一方、「アベノミクスでもともとあった格差は拡大した。さらに中小企業は人手不足に悩むことになった」と指摘する。

 国税庁の「民間給与実態統計調査」では、二〇一二年分の調査から正社員と非正規雇用者を区分けするようになった。一二年の正社員の数は三千十二万人。新型コロナウイルス禍前の一九年には四百七十四万人増の三千四百八十六万人となった=グラフ(上)。同じ期間に増えた非正規雇用者は二百二十七万人で、正社員の増加が際立つ。

 一方、格差は拡大した。正社員の平均年収は一二年の四百六十八万円から、コロナ禍で給与が落ち込む前の一九年には五百三万円へと7・5%増加した。

 非正規雇用者の平均年収は一九年に百七十五万円。同じ期間に正社員の平均年収は三十五万円上昇したのに対し、非正規雇用者は七万円だけだった。正社員の男性と女性の間でも格差が開いた。一九年の平均年収は男性が一二年比四十万円増の五百六十一万円で、女性は三十九万円増の三百八十九万円だった。

 企業規模による格差も開いた。資本金十億円以上の大企業の平均年収は一二年比五十三万円増え、七百六万円となった=グラフ(下)。同二千万円未満の小規模企業は三十六万円増の三百九十五万円だった。

 正社員が増加した裏側では、中小企業に求人難が起きていたと北見さんは明かす。中小企業が若い人材を雇うには、初任給を上げる必要があった。このしわ寄せで、中高年の昇給をゼロにした企業もあった。それでも初任給を引き上げた分の吸収はできず、利益を削って若い人の給料を出している状況だったという。

 北見さんは「コロナ禍前に人件費で赤字になっていた中小企業が懸念材料だ。今はコロナ禍に伴う緊急融資で資金繰りができていても、コロナ明け後に経営難が明るみに出る可能性がある」と警鐘を鳴らす。