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【地域経済】中小DX「学び直し」カギ「リスキリング」社内で促す

2022/02/01

 デジタル化で業務内容の変革が進む中、企業が従業員に必要な技術や能力を身に付けさせる「リスキリング(学び直し)」の機運が、中小企業でも高まっている。印刷からデジタルに事業を広げる西川コミュニケーションズ(名古屋市)は、経営者が率先してIT関連の資格を取得し、組織全体で再教育を進めている。(平井良信)

 一九〇六(明治三十九)年創業の同社は、電話帳など印刷事業が中心だったが、近年は人工知能(AI)を使った取引先のデータ分析や営業支援、CG制作など、デジタル領域の事業を手掛けるようになった。業務範囲の拡大に伴い、従業員にデジタル関連の技術の再教育が必要となった。

 AIに力を入れ始めたのは二〇一八年。日本ディープラーニング協会主催のAI検定試験「G検定」を西川栄一社長が率先して取得した。社員に書籍を配るなど資格取得を促し、これまでに四百人のうち約八十人がG検定に合格した。

 四十時間ほどを勉強に充ててG検定を取得した神田崇弘さんは「自分より忙しい社長が取ったのを見て、頑張ろうと思った」と話す。ITの基礎知識の資格「ITパスポート」も取得し、販売支援を担う新部署のリーダーに抜てきされた。「学んだ知識と業務がひも付く感覚があり、資格を取って良かった」と語る。

 同社は今後も資格取得費用を負担したり、業務時間内に勉強会を開催したりと全社を挙げて社員の再教育を進める。西川社長は「時代に即した社員のスキルアップは不可欠。会社として『学び』の風土を定着させていきたい」と強調する。

 デジタル化で業務を変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む企業が増える中、人材の育成が急務だ。リクルートワークス研究所の大嶋寧子主任研究員は「中小企業は社外から人材を採ることへのハードルが高く、社内でリスキリングを進める必要がある」と指摘。その上で「表彰制度やチーム学習など学びを加速するための仕掛けづくりが重要だ」と話している。

(メモ)

 リスキリング 企業が今後必要となる仕事上のスキルや技術を従業員に再教育すること。職場での実践を通じて知識を身に付ける「オン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)」や、職場を離れて大学などで学び直す「リカレント教育」とは異なる。

デジタル化に力を入れ始めた2018年の社内学習会=名古屋市東区で(西川コミュニケーションズ提供)
デジタル化に力を入れ始めた2018年の社内学習会=名古屋市東区で(西川コミュニケーションズ提供)