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【地域経済】進め 職場のLGBT施策 日本ガイシ 福利厚生開始

2022/01/27

 同性のパートナーにも結婚祝い金などの福利厚生が使える制度を開始した日本ガイシ(名古屋市)。踏み切った背景には、同社が将来の事業に向けて掲げる「変革」を人事面でも実現しようとの狙いがある。(中山梓)

 同社では性的少数者(LGBT)であることを公表して勤務する従業員がいたことをきっかけに、これまでもLGBTに関する社内研修をしたり、性別を問わずに使えるトイレを整備したりと、働きやすい環境の整備に力を入れてきた。同性カップルを公的に認める「パートナーシップ制度」を導入する自治体が増える中、さらにできることがないかと検討したのが福利厚生制度の拡充だった。

 民間団体「自治体にパートナーシップ制度を求める会」によると、一月四日時点で全国百四十七自治体が同様の制度を導入している。東海地方でも導入する自治体はあるが、居住地によって制度の有無が異なる。日本ガイシでは同性カップルであることを証明するため、一般社団法人「Famiee」(ファミー、東京)が発行する書類の提出を条件とした。

 日本ガイシの担当者は「人事も変わっていくというメッセージを伝えたい。いろんな制度があって幅広い人材を受け入れている会社だと感じてもらえれば、もっと会社全体が風通し良くなるのではないか」と話す。

 企業でも同性パートナーを法律婚の配偶者と同様に福利厚生で取り扱う動きは広がっており、大和ハウス工業(大阪市)やエイチ・アイ・エス(HIS、東京)などが取り入れる。物語コーポレーション(愛知県豊橋市)も二〇一九年に制度を開始した。

 ただ中小企業も含め大半の職場のLGBT施策は、研修や差別禁止の明文化、相談窓口の設置などにとどまっており、金銭的な支給にまで及んでいない。認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」(大阪市)が昨年まとめた白書によると、同性愛などの当事者の64・5%が職場のLGBT施策が「ない」と回答。LGBT施策がある職場でも「福利厚生での同性パートナーの配偶者扱い」は10・6%にとどまった。

 村木真紀理事長は「福利厚生は当事者にニーズが高いが、研修などに比べて導入が少ない。研修で終わらせず、制度にまで踏み込む時期にきている。LGBTの当事者が社内にいると考えて経営判断をしなくてはいけない」と力を込める。