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【愛知】企業での経験 学生に教えよう 名市大が実務家教員養成講座

2022/01/12

4月開講 受講者募る

 企業や官公庁で培った経験を生かして大学などで教育や研究にあたる「実務家教員」の養成が、各地の大学で進められている。国内の拠点の一つになっている名古屋市立大(名古屋市)は、四月からの新年度に始まる「養成プログラム」の受講生を募っている。(出口有紀)

 実務家教員は、即戦力となる人を育てる「専門職大学」などで広く採用されている。社会人向けの「学び直し教育」などを担う人材として、人材確保とともに質の向上が課題になっている。

 名市大が代表となり、中京大(名古屋市)や岐阜薬科大(岐阜市)などが参加するグループは、文部科学省の事業に採択され、昨年四月から受講生を受け入れている。

 夜間や週末のオンライン授業を中心に、大学で授業や研究をするのに必要な知識やスキルなどを学ぶ。出願は十九日まで。大学卒業程度の学力があり、実務経験が五年以上などの条件がある。定員十人で書類と面接で選考される。詳しくは「進化型実務家教員養成プログラム」で検索。

    ◇

◆仕事を見つめ直す機会に

 実務家教員の養成プログラムでは、社会や実務の課題に対処してきた経験を体系化し、学生に伝える技術を磨く。大学での学びは、自身の職場での業務の進め方や部下との接し方を見直す機会にもなっているという。

 名市大を中心にしたプログラムは昨年四月にスタート。九月までの基本コースで受講生十人が学生のワークショップを指導する演習などに取り組んだ。十月からは受講生五人が専門コースに進んでいる。

 注力するのは、なりたい教員像を具体的に描いてもらうこと。人材育成の力や組織を連携させる力など、実務家教員が身に着けるべき十の能力を示し、プログラムを通じ達成度も分かるようにした。

 受講生は、プログラムを担当する鵜飼宏成教授(56)=起業家教育=と定期的に面談し、仕事で得た能力や成果などを詳細に書き出し、自分の専門性も見直す。自身も民間シンクタンクでの勤務経験がある鵜飼教授は「実務経験を伝えるだけでは、教員としてやっていくのは厳しい。不足する能力や経験は、実務でもう一度培う必要があると気付いてもらえたら」と話す。これらの過程が、自分自身や仕事を見直すことにもつながる。

 専門コースに在籍する今川隆さん(55)=名古屋市緑区=はインフラ系企業で約三十年、防災やリスク管理などの業務を担ってきた。「(授業で)学生が発言しやすい方法を考えたことで会社でも部下が学びやすく、意見を言いやすい環境が作れているか意識するようになった」という。

 同じく専門コースで学ぶ吉本修三さん(41)=同市東区=はマンション管理会社で営業などに従事。「自分の仕事や経験を振り返ることで専門の幅も広がり、もっと研究を深めたくなった」と話す。二人は専門コースを終えた後、大学院への進学を考えているという。

実務家教員のキャリア形成について鵜飼教授(右)と面談する吉本さん=名古屋市立大で
実務家教員のキャリア形成について鵜飼教授(右)と面談する吉本さん=名古屋市立大で