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【地域経済】転職 コロナ下の事情は 希望者数は増加傾向続く

2022/01/01

 多くの人にとって、新しいキャリアを歩みだす際の選択肢になる「転職」。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、二〇二〇年は、十年ぶりに転職者数が減少したものの、転職希望者数は増加傾向が継続している。経済の回復次第で、転職者数は再び増加に転じることも予想される。

 総務省の労働力調査では、転職者数は一一年以降、右肩上がりに増加。一九年は三百五十一万人と、比較可能な〇二年以降で過去最高となったが、二〇年は新型コロナによる雇用情勢の悪化を受け、三百十九万人に減少した。一方で、二〇年の転職希望者は就業者数(六千六百六十七万人)の12・8%に当たる八百五十七万人で、割合は一九年の12・5%より増えている。

 マイナビの二一年の転職活動における行動特性調査によると、転職者が活動を始めた理由は「仕事内容に不満があった」が最も多く、「会社の将来性、安定性に不安があった」「職場の人間関係が悪かった」が続く。

 ただ、日本では転職により給料が減少することも珍しくない。同じ調査で、前職の平均年収が四百六十一万二千円、現職は四百五十三万円と減少していた。厚生労働省の「転職者実態調査」(二〇年)によると、転職後の賃金が転職前より「減った」と答えた人が40・1%と、「増えた」の39・0%をわずかに上回る。

 第一生命経済研究所主任エコノミストの星野卓也氏は転職の動向について「経済が回復すれば再び転職者数も増加する」と見通す。そのうえで、退職金制度などについて「今は(同じ会社で)長く働いた人が評価される仕組みになっているが、見直しが必要だ」と述べ、成長産業に人材を振り向けていくためにも国の支援や企業の変革が不可欠と指摘している。

    ◇

◆早期・希望退職募集
◆黒字企業でも続出

 新型コロナウイルスで打撃を受けた企業のみならず、黒字企業でも早期・希望退職者の募集が相次いでいる。東京商工リサーチの調査では、二〇二一年に上場企業が募った早期・希望退職者の人数が十月末時点で、一万四千五百五人に達し、三年連続で一万人を上回った。実施企業数も前年同期比で一社減の七十二社と、二年連続で七十社を超えた。

 募集・応募人数が百人以下の企業が、半数の三十六社。一方、千人以上の企業は、日本たばこ産業(東京、二千九百五十人)など五社。ITバブルが崩壊した〇一年(六社)に次ぐ二十年ぶりの高水準で、このうちKNT-CTホールディングス(東京)を除く四社は直近の本決算の純損益が黒字だった。

 業種別では、外出自粛の影響を受けるアパレル・繊維製品の十社が最多で、生産拠点や事業の集約が進む電気機器が九社で続いた。運送は六社で、うち鉄道・航空が五社。サービスは五社あり、うち四社の観光は十年ぶりに募集企業が確認されたという。名古屋証券取引所上場企業では五社が実施した。

 東京商工リサーチの担当者は、増加している理由を「新型コロナによる雇用の悪化が底を打った感があり、企業が以前から決めていた退職者の募集がしやすい環境になってきている」と分析。「大型の人員削減は今後もある程度は出てくるだろう」と見通した。(鈴木啓太、中山梓)