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【はたらく】女性を悩ます生理前の不調 PMS 職場の理解を 治療で軽減 婦人科受診して

2021/12/20

 月経(生理)前になるとイライラしたり、腹痛などの体調不良を感じたりする月経前症候群(PMS)。症状に悩む女性は多いとされるが、認知度はそれほど高くないのが現状だ。毎月不調を感じていても、仕事を休むことに抵抗がある人も多い。適切な治療や職場の理解が、健康に長く働き続けるには重要だ。(熊崎未奈)

 医薬品大手ツムラ(東京)が七~八月に実施した調査によると、十~四十代の女性約二千四百人のうち、48・3%が「生理前に不調を感じる」と回答した。最も多い症状は、焦燥感やイライラといった精神的な不調。眠気、不機嫌、腹痛、便秘・下痢、倦怠(けんたい)感が続いた。

 PMSの治療に力を入れる「ココカラウィメンズクリニック」(名古屋市)院長、伊藤加奈子さん(44)によると「PMSの症状で受診する人は年代を問わず、増えている」。少しずつ知られ始めているためと考えられるが、一方で「受診して初めてPMSを知る人も少なくない」と話す。

 PMSは生理の三~十日前から出ることが多く、生理が始まると症状が落ち着く。伊藤さんによると、詳しい仕組みはまだ分かっておらず、ホルモンバランスの変化が原因と考えられている。「疲労や人間関係などのストレスでも症状が強く出やすい」という。

 同じ調査では、PMSの症状がある女性八百人のうち、64・3%が「PMSの際は心身ともに疲れ果てている」と回答。一方で仕事や学校を休んだ経験がある人は17・6%にとどまり、52・1%は「休んだことはないが、本当は休みたかった」と答え、無理をしていることが分かった。

 背景には、職場や学校の理解不足、女性自身がPMSという病気や適切な治療について知らないことがある。症状のある女性の九割が「PMSで婦人科を受診したことがない」と答えていることからも明らかだ。

 日本産科婦人科学会によると、国内では月経のある女性の5・4%が生活に困難を感じるほど強いPMSを示している。治療は漢方薬や、排卵を抑制して女性ホルモンを安定させる低用量ピルなどの投薬。興奮作用があるカフェインを避けた食事や適度な運動など生活の改善も指導する。伊藤さんは「治療後は楽になる人が圧倒的」と言う。

 症状がPMSかどうかを見極めるには、スマートフォンのアプリや手帳などで体調を記録するといい。イライラや体の不調がどういうときに出るのかを二~三カ月間続けて書き、それが生理前と分かれば婦人科に相談するよう提案する。

 女性が働きやすい職場づくりに役立てようと、PMSについて学ぶ機会をつくる企業もある。広告物を制作するデザイン会社浅野製版所(東京)は昨年二月、PMSをテーマに研修を開いた。女性社員十七人が参加し、管理栄養士から正しい食生活などを学んだ。「毎月しんどい理由が初めて分かった」といった声が上がり、評判は上々。今年は、男性も含め全社員で生理について学ぶ研修をオンラインで開催した。

 勤務は不規則になりがちで、以前は女性社員の二、三人が毎月休んだり早退したりしていた。しかし、研修後は生活を見直す、治療を受けるなどの取り組みで、PMSや生理痛を理由に休む人はほぼゼロに。当日になって出勤予定を在宅勤務に切り替えることにも、柔軟に対応している。研修を企画した新佐絵吏(しんさえり)さん(43)は「女性特有の問題がある以上、配慮は必要。長く働いてもらうため、今後も学びの場をつくりたい」と話す。

社員同士でも集まってPMSなど女性の健康について学んでいる=東京都中央区の浅野製版所で(同社提供)
社員同士でも集まってPMSなど女性の健康について学んでいる=東京都中央区の浅野製版所で(同社提供)