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【三重】消費税納税 組織の負担増? シルバー人材センター困惑

2021/12/23

23年秋導入の「インボイス制度」
亀山市議会 「国の支援を」意見書案可決

 事業者を対象に、二〇二三年十月に導入される消費税の新ルール「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」を巡り、地域の高齢者雇用を支えるシルバー人材センターが対応に迫られている。亀山市議会は二十一日、納税する負担が増えるとみられるセンターへの支援を国に求める意見書案を、県内で初めて可決。制度への疑義を唱えた。(鎌倉優太)

 ◇ ◇ ◇

 全員一致で可決された意見書案には「制度の適用は地域社会に貢献している高齢者のやる気や生きがいをそぎ、地域社会の活力低下をもたらす」「新たな税負担は死活問題であり存続の危機」などの文言が盛り込まれた。

 「センターの会員はお金を稼ぐというよりは地域貢献が主目的。そんな年収五十万円程度の高齢者に改めて納税させるのは酷ではないか」。市シルバー人材センター=東町一=の竹井道男理事長は新たな制度に不安を募らせる。

 同センターは市や企業、個人から清掃や施設管理などの仕事を受注し、会員登録している高齢者らに発注している。会員は七十代が中心の市民約二百五十人で、ほとんどが同センターと請負契約を結ぶ個人事業主扱いだ。

 年間の課税売上高が一千万円以下の事業者は「免税事業者」として消費税の納付を免除されており、同センターの会員も同様だ。しかし制度の導入で、会員は免税事業者のままでいるか、インボイスを発行できる「課税事業者」に登録するかを迫られる。課税事業者になれば、免除されていた消費税を国に納める必要がある。

 全国のセンター約千三百の会員約七十万人をまとめる全国シルバー人材センター事業協会(全シ協)=東京=の担当者によると「会員には高齢者が多く、それぞれに課税事業者の登録をしてもらうのは困難」と説明。制度が導入されても「会員が課税事業者になることはない」という。

 一方、会員が課税事業者にならなければ、センターが納税義務を負うことになる。亀山市シルバー人材センターの二〇年度決算では、会員の収入に相当する「分配金」は計約一億五千万円。単純計算で、消費税率10%分の千五百万円について、新たな納税を迫られる可能性がある。

 竹井理事長は「公益社団法人であるセンターは原則、必要な費用を大幅に超える収入を得てはいけない。余剰金はなく、新たな高額の納税は財政的に厳しい」と漏らす。全シ協の担当者は「制度が始まれば、各センターの納税の負担増は避けられない。そのしわ寄せは会員の収入減やサービスの値上げにつながる」と語った。

 担当者によると現在、亀山市議会の他に愛知県半田市や長野県松本市など全国の十以上の議会で、同様の意見書案が可決されているという。

【インボイス制度】 事業者は売り上げに含まれる消費税から、自社が仕入れ先に払った消費税分を控除した額を国に納めている。2019年の軽減税率導入により消費税率が8%と10%の「複数税率」になった影響で、事業者間の取引で適用税率や税額などをより正確に記入した請求書「インボイス」が必要となった。23年10月から、インボイスを保存していない事業者は控除を受けられず、納税額が増えることになる。

意見書案の提出を求める請願に全員一致で賛成する亀山市議ら=同市議会で
意見書案の提出を求める請願に全員一致で賛成する亀山市議ら=同市議会で