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【社説】外国人看護師 温かく迎え入れよう

2008/08/18

 経済連携協定(EPA)に基づきインドネシアから来日した看護師、介護福祉士の候補者を「安い労働力」と見なしてはならない。国内の受け入れ施設は雇用条件などを厳格に守る義務がある。

 来日した候補者二百余人は、まず半年間の日本語研修を受ける。このあと、看護師候補者は四十五の医療機関、介護士は五十二の特別養護老人ホームや老人保健施設に分かれて働く。看護師候補者は来日から三年以内、介護士は四年以内に日本の国家資格を取得しないと帰国しなければならない。取得すれば、その後何年でも日本で就労できる。

 悪質な仲介業者の関与を防ぐため受け入れ窓口を厚生労働省管轄の「国際厚生事業団」に絞り、インドネシア政府と交渉してきた。

 国内の受け入れ施設に対し、適切な研修内容、指導者の配置、日本語学習支援などの体制を敷き、同じ仕事をする日本人と同等以上の給与の支払いを義務付けている。これらが守られるかどうかを厳格にチェックする必要がある。

 候補者のほとんどが信仰しているイスラム教の慣習にも十分に配慮した研修が求められる。

 候補者は全員が母国の看護師資格保持者で、大学看護学部卒業者が少なくない。それでも三-四年で日本語の国家試験に合格するのは言葉の壁があり容易ではない。

 東京都は国家試験に向けたテキスト開発を検討し始めた。厚労省は自治体に任せきりにせず、支援策を打ち出してもらいたい。

 心配されるのは、日本の看護、介護職員の「人手不足」解消を理由に、今後安易に外国人看護師・介護士に依存しかねないことだ。

 国内では看護師のうち三割の約五十五万人、介護士のうち四割の二十万人が国家資格を持ちながら、生かしていない。

 夜勤、長時間労働の割には給与が低いために、やむなく離職、あるいは最初から職に就かないからだ。看護・介護現場の人手不足は処遇の悪さに起因しており、絶対数が不足しているのではない。

 待遇改善による離職防止を放棄し、不足分を外国人で補おうとすれば、結局は日本の看護・介護の質の低下につながる。

 インドネシアの看護師協会は、看護師の日本行きに積極的ではない。特に看護師の介護士候補者としての研修には強く反対しているといわれる。人材流出で医療の空洞化を招く懸念があるからだ。

 日本側としても、このような点への配慮を忘れてはならない。