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【三重】みえ経済/介護ロボで負担を軽く

2021/11/18

鈴鹿の特養 労災防止へ積極活用

 介護の現場にロボットを導入する動きが広がっている。民間調査会社によると、市場規模は年々拡大し、二〇二三年度には二十五億円を超える見通し。人手不足や、利用者の移動を支援する際に腰を痛めるなど職員の負担が大きいことなどが背景にある。ロボットの活用で、現場の負担を軽減する効果が期待されている。(横田浩熙)

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 一六年から最新の介護ロボットを導入してきた鈴鹿市深溝町の特別養護老人ホーム「鈴鹿グリーンホーム」。現在、職員に装着し、体への負担を軽減する「パワースーツ」など九機種を配備している。

 今年二月に投入した移乗支援ロボット「SASUKE(サスケ)」は、ハンモック状のシートで寝たきりの利用者を支え、横になったまま持ち上げることができる。レバー操作のみで移乗作業ができることから、職員の多賀ひとみさん(49)は「腰が痛くなることはないし、利用者本人も安定した楽な姿勢でいられる」と利点を話す。

 ほかにも利用者の排せつのタイミングを予測するロボットや、夜間に利用者が眠っているかどうかを把握できるセンサーを備えたロボットなどがある。

 厚生労働省によると、腰痛などの労災は、約三割が利用者をベッドから車いすへ移し替える「移乗作業」で起きる。

 特に利用者がベッドから自力で起き上がれない場合、介助者は利用者の体を抱きかかえなければならず、腰への負担が大きい。同施設によると、職員一人当たり一日二十回以上も移乗作業をすることもあるという。

 服部昭博施設長(49)は「職員がけがで離職し、シフトに穴があいてしまうと、他の職員の負担が増してしまう」と、マネジメント面でも介護ロボットを積極的に導入する意義を強調。「少子高齢化により、高齢者が増える一方、働き手は減ってゆく。業界をリードする覚悟で、さまざまな試みに挑戦し続けたい」と話している。

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国内市場 拡大見込み
民間調査会社
 矢野経済研究所(東京)が昨年12月に公表した調査では、2019年度の介護ロボットの国内市場規模は18億5400万円(メーカー出荷金額ベース)。今後も拡大が見込まれ、23年度には同年度比で約4割増の25億6000万円(同)に膨らむと予測している。

 慢性的な人手不足などから介護ロボットの導入台数は全国的に増えており、開発には大手からベンチャーまでさまざまな企業が参入。排せつ支援、見守り支援、移乗支援のロボットが特に伸びているという。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの加藤純悟マネージャーは、新型コロナウイルス禍で人と人との接触を減らすため、ロボットの価値が見直されていることも市場拡大の一因と分析。「メーカー側が介護現場のニーズを突き詰めていけば、今後もしっかりと普及してゆく」と話した。

介護ロボットを使って利用者を寝かせたまま移乗する職員=鈴鹿市深溝町の鈴鹿グリーンホームで
介護ロボットを使って利用者を寝かせたまま移乗する職員=鈴鹿市深溝町の鈴鹿グリーンホームで