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【社会】保育・介護9000円賃上げ 19日決定 幼稚園教諭も収入増

2021/11/12

 政府が十九日に決定する経済対策の主要項目が判明した。処遇改善が遅れている保育士と介護職の全員の賃金を月額3%程度に当たる約九千円引き上げる。地域の救急医療を担う看護師の収入を3%程度増やし、幼稚園教諭の賃上げも実施する。家賃を軽減する子育て世帯の対象を広げ、観光支援事業「Go To トラベル」は来年二月ごろの再開を検討する。岸田文雄首相が掲げた分配政策を重視した内容とする。

 首相は、公的な仕組みで決まる保育士、介護職、看護師の賃上げを先行し、経済政策の目標とする「成長と分配の好循環」への布石とする考えだ。政府は経済対策の財政支出を三十兆円超とする方向で調整している。対策決定後、裏付けとなる二〇二一年度補正予算案を早期にまとめ、年内に開く臨時国会での成立を目指す。対策の一部は補正と並行で編成する二二年度当初予算案に盛り込む。

 介護職や看護師らの賃上げの原資は、補正予算に計上する交付金で来年二~九月分を確保する。申請の手続きを経るため、手元に届くのは来春以降になる見通しだ。来年十月以降は介護報酬や診療報酬で対応する。

 ボーナスなどを含めた職種別の平均月収は、二〇年の全産業平均三十五万二千円に対し、保育士が三十万三千円、介護職が二十九万三千円と低かった。看護師は三十九万四千円で、医師の四割にとどまる。

 現行の家賃軽減は、夫婦と子ども三人の世帯の場合、年収四百九十五万円以下が対象だが、年収六百四十六万円以下に緩和する。低所得者らに低い家賃で提供される「セーフティーネット住宅」への入居が条件で、家賃を月額で最大四万円軽減する。

 首相が十日の記者会見で表明した困窮学生への十万円支給は低所得世帯の大学、短大、高等専門学校生らを対象とする。新型コロナウイルス禍で学費に充てるアルバイト収入が大幅に減ったことなどを要件に挙げた。

 世界トップクラスの研究機関を目指す大学を支援する「大学ファンド」の元本を十兆円に増やすことや、自民、公明両党が十日に合意した十八歳以下への十万円相当の給付、原油高対策、防衛予算の増額も明記する。

 経済対策の財源は二〇年度予算の繰越金や決算剰余金を活用する。ただ大幅に不足する見通しで、多くは借金である新規国債の発行で賄う公算が大きい。