中日新聞CHUNICHI WEB

就職・転職ニュース

  • 無料会員登録
  • マイページ

【地域経済】衆院選10.31経済の現場から/働く女性 活躍の場 まだ足りない

2021/10/29

 眼鏡用品卸の名古屋眼鏡(名古屋市)で働く小木曽恵さん(38)は昨年男児を出産し、九カ月間の育児休業を経て四月に復職した。時短勤務をしながら、部長級のイノベーション室長として社内の業務の効率化や課題解決に当たっている。「男女の隔てなく、それぞれに合った仕事ができる」と社風を評価し、「会社の成長を手助けできる存在になりたい」と意欲的だ。

 同社は二〇〇六年に初めて育休の取得希望者が現れたのを機に、女性が働きやすい環境づくりに力を入れてきた。在宅勤務制度は、夫の転勤などで遠方へ引っ越した社員も利用できる。育休への理解を深めるため男性の取得も義務化した。

 一七年から出産・育児・介護による女性の離職はゼロ。今は正社員約六十人の過半と管理職の約四割が女性だ。今年一月には「女性活躍」の取り組みが特に優れた「プラチナえるぼし」の企業に東海三県で初めて認定された。小林成年(なりとし)社長(56)は「一人一人のニーズをくみ取って制度をつくった結果」と振り返る。

 ◇ 

 女性の就業率が上がっている。総務省の労働力調査によると、十五~六十四歳の生産年齢人口に占める就業者数の割合は長く50%台後半で推移していたが、一〇年に60%を突破。一九年には70%台に達した。

 年齢別にみると、結婚・出産を機に家事や育児に従事するため三十代前半が落ち込む「M字カーブ」が、ほぼなくなった。キャリア意識の変化や家計の厳しさなどの背景がある中、育休制度の整備・充実も一因となったのは間違いない。

 企業の管理職に占める女性の割合も上昇し、部長級は〇一年の1・8%から二〇年は8・5%、課長級は3・6%から11・5%となった。ただ、政府が二〇年の達成を目指してきた、管理職や議員など「指導的地位」にある女性の割合目標「30%」にはほど遠い。名古屋眼鏡のような例はまだ少数派だ。

 ◇ 

 世界に比べ日本の女性活躍の遅れは大きい。世界経済フォーラム(WEF)が三月に公表した、男女の格差を示す「ジェンダーギャップ指数」は百五十六カ国中百二十位。指数の基になる政治、経済、教育、健康の四分野のうち、政治と経済の低評価が響いている。

 政府は昨年十二月に閣議決定した第五次男女共同参画基本計画で、指導的地位の女性の割合目標を「二〇年代の可能な限り早期に30%程度となるよう目指す」と後退させた。衆院選では各党が女性の登用や男女の賃金格差解消などを公約に掲げるが、候補者に占める女性の比率は前回並みの17%にとどまる。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの矢島洋子主席研究員は「企業は時短勤務など働き方に制約のある女性にも仕事の機会や評価を与え、キャリアアップできる環境をつくることが求められる」と指摘。政治に対しても「国として女性活躍の旗を降ろさないことが大事だ」と注文する。(中山梓)