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【社会】ペットの同伴出勤、忌引休暇… 広がる飼い主の福利厚生

2021/09/25

 犬や猫などペットを飼う社員が対象の福利厚生制度を導入する企業が増えている。死んだ際の忌引休暇や同伴出勤、手当支給など内容はさまざま。「ペットも家族の一員」と考える傾向の高まりが背景にあるようで、働く意欲の維持や社内コミュニケーションの増加などに一役買っている。

 「お見送りの時間をしっかり持てたことで、気持ちを切り替えて仕事に臨めた」。八月に十六年間連れ添った愛犬を失ったペット保険大手「アイペット損害保険」(東京)の喜山(きやま)かなみさん(35)はこう振り返る。

 利用したのは、同社が二〇一六年に始めたペットの死で有給休暇を取れる「ペット忌引」。喜山さんは愛犬が死んだ火曜日を含め、平日に計二日間取得した。好物のリンゴと肉を供えて火葬した時は、思い切り泣いた。「悲しみを吐き出す余裕がないと喪失感が長引くとも聞く。職場の理解が本当にありがたかった」と語る。

 同社にはペットと過ごすための「ペット休暇」もあり、ウサギやカメなどの小動物にも適用。制度導入以降、離職率は半減した。広報担当の森田美紀さんは「部署問わず、社員同士のコミュニケーションが増えた。多様化する家族の形に寄り添い、安心して働ける環境をつくりたい」と話す。

 犬の情報サイト「INUNAVI」が七月に愛犬との死別経験を持つ十~六十代の三百二十五人に調査したところ、精神的・身体的な不調に陥る「ペットロス」を経験した人は約九割に上った。業界団体「ペットフード協会」の推計では、二〇年の犬と猫の飼育数は全国で計千八百十三万匹。同年の十五歳未満の子ども千五百十二万人を上回り、少子化・核家族化に伴い、ペットを家族同様の存在と捉える考え方が広まっている。

 動物関連以外の企業でも導入の動きが出ている。システム開発会社「ファーレイ」(東京)では、〇〇年に猫と一緒に出勤できる制度を採用。猫好きの創業メンバーが自宅に置いていけないと連れてきたことがきっかけだ。同社の福田英伸社長(50)は「猫がいると自然と会話が生まれ、雰囲気が和む」とほほ笑む。

 社員の半数以上が、さまざまな事情で保護された猫を飼い、月五千円の「猫手当」も支給する。会員制交流サイト(SNS)で話題となり、求人への応募が増えたり、関心を持つ企業が顧客になったりと、思わぬ好影響をもたらしたという。

 恋愛・婚活サイトの運営会社「エウレカ」(東京)も一六年にペットの同伴出勤制度を導入。アレルギーを持つ人や苦手な人にも配慮し社内に設けた一角でペットと過ごせるようにした。

出勤した社員がオフィスに連れてきた猫=東京都中央区で(ファーレイ提供)
出勤した社員がオフィスに連れてきた猫=東京都中央区で(ファーレイ提供)
ペットと同伴出勤した社員が過ごすエウレカ社内の一角=東京都港区で(エウレカ提供)
ペットと同伴出勤した社員が過ごすエウレカ社内の一角=東京都港区で(エウレカ提供)