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【地域経済】外国人労働者 全力支援 名古屋の人材紹介「クロフネ」

2021/08/31

保険加入や母国送金手助け 「セーフティーネットに」

 外国人の人材紹介を手掛けるスタートアップ「KUROFUNE」(クロフネ、名古屋市)が、技能実習生など国内で働く外国人向けの生活支援サービスを強化する。金融機関から融資を受け、加入手続きや外国人が相談などをできるアプリを開発し、十一月にも導入。外国人労働者が増える中、サービスを利用する外国人や雇用する企業の利便性を高める。(鈴木啓太)

 ◇ ◇ ◇

 クロフネは二〇一八年二月設立で、各地の代理店を通じ、外国人労働者を企業に紹介する事業を展開している。労働者の生活支援サービスでは、保険会社と連携し、けがや病気で働けなくなった場合に最大で総額百二十万円の所得を補償する保険を提供。母国への安い手数料での送金や、会員制交流サイト(SNS)を活用した外国人スタッフによる相談も二十四時間受け付けている。

 支援サービスには、技能実習生や特定技能者のベトナム人やフィリピン人を中心に、申請中を含めて六百人ほどが加入する。雇用する企業が一人当たり一万六千五百円の年会費を負担し、福利厚生として導入するケースが多いという。

 倉片稜(りょう)社長によると、外国人労働者は母国での日本語学習費用など借金を抱えて来日することが多い。「セーフティーネットとして何か提供できないかと考えた」と説明する。相談は査証(ビザ)の更新や仕事の悩みなどが目立ち、多い時は週に六十件ほどが寄せられることもある。

 アプリの開発は、加入者の増加に対応するのが狙い。現在は書類で受け付けている加入手続きをスマートフォンやタブレット端末からできるようにし、事務作業を効率化する。アプリを通じて外国人が困り事を相談できるようにするなど、利便性も高める。

 開発費には、日本政策金融公庫(日本公庫)と大垣共立銀行(OKB、岐阜県大垣市)から融資を受けた計一千万円を充てる。日本公庫からは、金融機関の資産査定で自己資本とみなせるローンで五百万円を調達。必要となる事業計画書は、名古屋商工会議所の担当者の助言を受けて策定した。OKBは、愛知県信用保証協会の保証を活用して五百万円を融資した。

 今後も順次、アプリの機能を向上させる方針で、倉片氏は「入国から帰国まで、われわれのサービスを使っていないと不便だと言われるまでにしたい」と展望を語る。加入者を二三年一月までに一万六千人まで増やす目標を掲げる。

 厚生労働省によると、二〇年十月末時点の国内の外国人労働者数は百七十二万人で、届け出が義務化された〇七年以降で過去最高を更新。コロナ禍の中でも前年比4・0%増だった。日本公庫名古屋中支店の山田卓司課長は「外国人労働者なしでは成り立たない社会になっている。安心して働く環境をつくることが地域の発展にもつながる」と意義を語った。

クロフネの取り組みを説明する倉片稜社長=名古屋市内で
クロフネの取り組みを説明する倉片稜社長=名古屋市内で