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【経済】農機をシェア 育て就農の芽 クボタ 新サービス、地域拡大へ

2021/08/14

1時間2000円程度 燃料代も不要

 トラクターなどの農機を共有して使う、クボタのシェアリングサービスが注目されている。購入すれば数百万円する農機を一時間二千円程度で利用でき、維持費や燃料代も不要だ。農業を始める上でハードルとなる初期費用を抑え、新規就農を後押しする狙い。四月に茨城県、五月に京都府の各一拠点でサービスを始め、今後さらなる地域拡大を見込んでいる。

 七月下旬、京都府亀岡市で開かれた農機シェアの説明会には、地元で農業に携わる十人ほどが集まった。クボタの担当者らがトラクターの操作や予約方法を解説。実際に畑で動かし、畝を覆うフィルムの貼り方を確認した。

 参加した地主寛一さん(46)は、亀岡市で農業を始めて二年目。京都特産の賀茂ナスやトマトを育てる。農機を自腹で購入するのは難しく、借りるつてもないのが悩みだったといい「朝早い時間でも、自分の都合で自由に使えるのはありがたい」と汗を拭った。

 このサービスは、スマートフォンで登録して説明会に参加すれば、農機の保管場所から自走可能な範囲で二十四時間いつでも利用できる。専用アプリで予約すると、保管倉庫を解錠でき、一時間当たり千九百八十円が課金される。燃料の軽油代などは全てクボタ側が負担する。

 先行してサービスを始めた茨城県つくばみらい市では、トラクターに取り付けて芋を掘り起こす装備もシェアリングの対象とするなど、各地の生産品目に合わせた製品を提供。農業を始めて日が浅い人だけでなく、所有していない農機を試しに使ってみたいというベテランの登録もある。

 農林水産省によると、二〇一九年の新規就農者数は約五万六千人。現在の調査方法で最も多かった一五年に比べ、約一万人少ない。農業の担い手不足が深刻化する中、土地確保や農機購入といった初期投資の負担の重さが課題となっている。

 クボタは来年度中にシェアリング用農機の保管場所を十拠点ほどに広げる計画だ。担当者は「農業に挑戦する人を増やして裾野を広げたい」と話した。

京都府亀岡市で開かれたクボタの農機シェアリングの説明会=7月
京都府亀岡市で開かれたクボタの農機シェアリングの説明会=7月