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【社会】雇用保険料上げ検討 雇調金の給付増財源不足

2021/07/29

 厚生労働省は二十八日、中小企業に勤める労働者の「休業支援金・給付金」に関し、昨年四月から今年四月までの休業分の申請期限を九月末に延長すると発表した。当初は七月末が期限だった。昨年四~九月については、シフト制で働くなど一定の条件を満たした人が対象。

 休業支援金は、新型コロナウイルス禍で勤務先の指示によって休業したにもかかわらず、休業手当が支払われない労働者が対象。労働者が直接、国に申請できる仕組みになっている。今年五~六月分、七~九月分の申請期限は、それぞれ九月末、十二月末となっている。

 厚生労働省が、雇用保険料引き上げの検討に入ることが分かった。新型コロナウイルス禍で雇用調整助成金の給付決定が四兆円を超え、財源が悪化しているため。労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で今後、保険料率を議論。早ければ来年の通常国会に雇用保険法改正案を提出する。

 雇用保険は仕事を失っても生活に困らないようにするための事業と、雇用安定や能力開発の事業に大きく分けられる。保険料は労使が支払っており、一部事業には国費も投入されている。現在の保険料率は特例で労働者が賃金の0・3%、企業が0・6%となっている。審議会では、料率上げのほか、国費投入の在り方も話し合う。

 育児休業取得者の増加も財政悪化につながる恐れがある。厚労省の試算で、育休給付事業は二〇二三年度から九十四億円の赤字に転落する見通し。政府は少子化対策などで男性育休取得を進めており、想定を超す財政悪化も予想される。

 雇用調整助成金は休業手当の一部が補塡(ほてん)される。コロナ禍を受けて昨年、日額上限を約八千三百円から一万五千円まで引き上げ、助成率を最大全額まで拡充している。給付拡大に伴い、財源不足が深刻化。原資となる雇用安定資金は一九年度末時点で一兆五千四百十億円だったが、本年度末に八百六十四億円まで減るとの試算が出ている。

【雇用保険】 失業や雇用対策のため、国が運営している保険制度。加入は義務で保険料は労使によって賄われる。現在の保険料率は労働者が賃金の0・3%で、企業は0・6%。一部事業には国費も投入されている。失業や退職した人に支払われる失業手当などの失業等給付と、雇用調整助成金や職業訓練を行う雇用保険2事業がある。育児休業中に、賃金の実質最大8割を受け取れる育児休業給付も雇用保険から支給されている。