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【社会】無期転換後8割 「賃金変わらず」 非正規雇用 実態調査

2021/07/29

 同じ職場で通算五年を超え有期雇用で働いた人が対象の「無期転換ルール」が適用された人の約八割が、賃金などの労働条件に変化がなかったことが、厚生労働省が事業所と労働者に実施した実態調査で分かった。ルールは転換後の待遇向上を企業に求めていないが、転換前に低賃金だった人は多い。企業側に改善の取り組みが求められそうだ。

 厚労省は二〇二〇年七月に事業所、今年一~二月に労働者を対象とした調査を実施。約五千七百の事業所と約六千七百人の労働者から有効回答を得た。無期転換ルールは非正規労働者の雇用安定を目的に、一三年施行の改正労働契約法に盛り込まれた。通算五年を超えて契約更新した有期労働者は、期間の定めのない雇用に転換できる。一八年度から運用が始まった。

 調査結果によると、一八、一九年度に無期転換を勤務先に申し込む権利を得た人で実際に行使した割合は27・8%。転換後も賃金などの労働条件に変化がなかった人は78・7%に上り、正社員になった人は9・2%にとどまった。

 ルールの適用を逃れようと企業が五年以内に雇い止めする事例が相次いでいるが、調査では、有期労働者の勤続年数上限を設定していない事業所が82・9%となった。一方、設定している14・2%の事業所のうちほとんどが上限は五年以内までと答えた。有期労働者で、無期転換を「希望する」と答えた人は18・9%。「希望しない」は22・6%、「分からない」は53・6%だった。

 希望する理由については「雇用不安がなくなる」が最多。実際に転換した人に意識の変化を聞くと、「より長く働き続けたい」との回答が目立った。希望しない理由は「高齢だから、定年後の再雇用者だから」との答えが最も多かった。厚労省は今後、調査を基にルール見直しを検討する。担当者は「転換によって賃金改善やキャリアアップを求める人は多い。ルールの周知も必要だ」としている。

【非正規労働者】 正社員ではない労働者。多くは期間の定めのある有期雇用で契約社員、パートタイマーといった多様な形態がある。バブル崩壊後の1990年代以降、企業の人件費抑制などを理由に増加傾向が続いてきた。雇用の不安定さが社会問題化しており、新型コロナウイルス禍による経済悪化で雇い止めや解雇が相次いだ。今年5月時点で雇用労働者の約35%に当たる2061万人に上る。正社員との賃金格差は大きく、厚生労働省の調査によると2020年、残業代などを除く平均月収で10万円余りの開きがあった。