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【社会】最低賃金 上げ幅最大 中小や飲食 困惑「容易でない」

2021/07/15

非正規労働者歓迎 「28円大きい」

 企業が労働者に支払う「最低賃金(最賃)」の引き上げ目安が過去最大の二十八円で決まった。コロナ禍で打撃を受ける中小企業や飲食店業者は、人件費増加で経営がさらに厳しくなると困惑する。働く人たちは引き上げを歓迎した。

 「労働者の待遇改善には賛成だが、容易に引き上げられる状況にない」と話すのは、愛知中小企業家同友会の鈴木良博労務労働委員長(48)。「上昇分の原資をどう捻出しようかと悩む経営者は多い」と懸念する。

 経営する金型商社「オネストン」(名古屋市)もコロナ禍による売上高減少に加え、材料費や営業車のガソリン代の値上がりが重しに。元請けからの値下げ要請や競合他社との価格競争で経営環境は厳しさを増しており、「賃上げできる利益を確保するため、大企業と中小企業の取引の適正化が必要だ」と訴える。

 コロナ禍の時短要請に応じてきた飲食チェーンの幹部は「引き上げで月に数百万円の人件費が増える。タイミングとしては最悪だ」と語気を強めた。

 老人保健施設で調理のパートとして働く愛知県豊橋市の女性(65)は「(引き上げ幅の)二十八円は大きいですね」と声を弾ませた。

 「仕事を始めて十五年たつが、いまだに時給が九百四十円。最近入った人たちと変わらない額で、ずっと不満があった」

 レストランでアルバイトをする名古屋市の男性(65)は、時給九百七十円。最低賃金を上回っているが、最近は周辺の店で時給千円以上の求人を見るようになったという。「(今回の引き上げで)うちの店も賃上げすることになるのでは」と期待する。

 アルバイトの学童指導員として働く名古屋市の三十代女性は「物価も上がっているし、今後子どもが生まれたりすることを考えると、まだまだ足りないと思っていた。自分の時給も上がってほしい」と話した。

 「全国一律で時給千五百円の最賃実現」を目指す愛知県労働組合総連合(愛労連)の竹内創事務局長代行(54)は「ほぼ据え置きの昨年と比べれば前進だ」と評価。「社会保険料の事業主負担を軽減するなど、中小企業への支援が必要だ」と語った。