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【暮らし】生理休暇 充実図る動き「男性も学び 相互理解を」

2021/06/29

 労働基準法で定められている「生理休暇」。ひどい生理痛などで働けない場合に請求できるが「男性上司に言い出しにくい」「急に仕事を休めない」といった理由から、取得率は1%を切る。働く女性が増える中で、仕事に集中しやすい環境を整えることは会社にとってもプラスとして、生理休暇の充実を図る企業が出てきている。 (今川綾音)

 ◇ ◇ ◇

 職場に女性用トイレがない、生理用品や鎮痛剤が入手しにくいなどの理由で、世界に先駆け、生理休暇が制度化されたのは一九四七年。労基法第六八条で「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、就業させてはならない」と定める。診断書は不要で日数に上限を設けることはできない。有給とするかどうかは労使の取り決めによる。

 ただ、厚生労働省の二〇一五年度雇用均等基本調査によると、女性労働者がいる事業所のうち、前年度に請求者がいたのは2・2%。請求をした女性の割合も0・9%にとどまる。休暇を有給としている事業所は・5%だった。

 「チームに男性社員が多くて申請しづらい」「生理休暇という名前が直接的すぎて口に出しにくい」

 男性社員が七割を占める企業向けITサービス開発会社「アイル」(大阪)が昨年実施した社内調査では、こうした声が多く上がった。同社は一九九一年の創業時から、就業規則で生理休暇を規定していたが、無給扱い。女性の半数近くが存在を知らず、年次有給休暇で対応したことがある人が三割に上った。

 調査のきっかけになったのが昨年八月、「男性歓迎!」と告知して開いた生理への理解を深めるオンライン研修だ。生理中のトイレは時間がかかり、男性との外回りの際は行きづらいといった切実な状況を受けたものだ。参加者三十四人の三分の二は男性だった。

 講師は、生理用品大手ユニ・チャーム(東京)の社員。同社が昨年から無償で提供する企業向けのプログラム「みんなの生理研修」に沿って、生理の仕組みや不調などを学んだ。続く話し合いでは、男性の間で「個人差がこれほど大きいのか」「ケアがこんなに面倒だとは」など驚きが広がった。一方で「配慮したくてもどう話題にしていいか分からない」と戸惑う人も。

 意識調査の実施とともに研修後の大きな成果は、生理休暇の有給化だ。「生理が重く、毎月年休を充てている」という声に、参加していた男性役員がゴーサインを出し、今年一月から年休とは別に、月一日まで有給の生理休暇が取れるように。事後申請もOKで、五月末までに三十一人が計四十五日の休暇を取得した。社内全てのトイレに生理用品を置く試みもスタート。交換のタイミングが思ったより早くて手持ちがなかったり、急に生理が来たりした場合に使いやすい。

 アイル広報の吉野美紀さん(33)は「女性社員の声を男性も自分事として捉え、制度が変わったことに感動した」と振り返る。後押しした取締役・岩本亮磨(りょうま)さん(35)は「働きやすい環境を整えて仕事に集中してもらうことは、会社にとってもプラス」と話す。

 五月末までに全国の二十一社に研修の機会を提供したユニ・チャーム。男性も生理を正しく知り、職場での相互理解を深めてもらうのが狙いだ。広報の清水桃香さんは「休暇が取りやすい土壌をつくることが大切」と話す。コロナ下、広く導入が進むテレワークは「生理周期に合わせて働き方が調節しやすく、女性が柔軟に働けるようになるチャンス」と、生理休暇の普及とともに期待する。

アイルの個室トイレに常備されている生理用品(同社提供)
アイルの個室トイレに常備されている生理用品(同社提供)