2009/02/10
入試シーズン真っただ中だが、雇用情勢の悪化で、入学金や授業料などが負担できず、進学を断念する例も目立つ。そんな人を支援しようと、学費を減免し奨学金を充実させる大学も増えている。 (砂上麻子)
立命館大(京都市)は、家計の悪化で学費納入が困難になった新入生や在学生を支援するため、二〇〇九年度の奨学金を約三億円増額する。対象となる学生数は前年度から倍増し、約千五百人になる。
在学生には、親の年収が四百万円以下の場合、前期分学費の半額を減免。新入生には、昨年一月以降に親の失業などで大幅な収入減になり入学困難になった場合、前期分学費を免除する。
同大によると、昨年秋ごろから「学費の納入を延期したい」「学費が納められない」といった学生からの問い合わせが目立ち始めた。同大広報は「奨学金増額で学生が安心して学業に専念できる環境をつくりたい」と話す。
秋田大教育文化学部(秋田市)では昨年、教職員の寄付で「成績の悪い」苦学生を支援する基金を立ち上げた。約百四十人の教職員から五年間で一千万円を目標に寄付を募り、半期の授業料の半額約十三万円を無利子で貸与する。
奨学金や学費免除を申請しても、基準の成績以下で、認められない学生が毎年数人出るという。「生活費を稼ぐためアルバイトに明け暮れ、勉強時間が取れない学生を助けたい」と同学部の中村裕教授。学生から提出された「勉学計画」と、学生、保護者との面接で貸与するかを決める。
恵泉女学園大(東京都多摩市)、淑徳大(千葉市)など新入生を対象に初年度納入金を一部免除する大学も増えている=表参照。
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日本学生支援機構(横浜市)の学生生活調査では、一年間の学費は国立大で約六十五万円、私立大平均は約百三十二万円。収入が激減した家庭にとって負担が重く、進学をあきらめる例も目立つ。進路情報研究センター「ライセンスアカデミー」(東京都新宿区)が昨年十一月、全国の高校五百七十七校を対象にしたアンケートで、22%(百二十八校)が「景気後退後の影響により、進学断念・進路変更した生徒が前年より増えた」と回答。入学する大学を一校に絞った推薦・AO入試でも「合格を辞退した生徒がいた」は7%(四十二校)あった。同センターの山野智彦さんは「経済環境の悪化が大学進学に影響を及ぼしているのは確か」と指摘する。
奨学金の利用者が最も多い日本学生支援機構は返済猶予の要望が多いことから、一月末に臨時相談電話を設けた。三カ月以上返済が滞っている延滞債権額は昨年度末で二千二百五十二億円。今後も雇用情勢の悪化が予想され、滞納額の急増が懸念されている。それに歯止めをかけようと、同機構は二〇一〇年度から、三カ月以上の滞納者に対し、個人情報を信用情報機関である全国銀行個人信用情報センターに提供する。提供された人は銀行ローンやクレジットカードの利用が難しくなる。同機構広報は「返済することを念頭に計画性をもって借りてほしい」と注意を促す。
学費が払えない場合、分割や納入延期に応じてくれる大学もある。前出の山野さんは「入学辞退や退学などを考える前に大学に必ず相談を」とアドバイスし、学費を負担する親に対しても「長期的な子どもの進学計画を立て、必要な資金準備を進めてほしい」と求めている。
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