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【愛知】授業はリモート 留学断念… 「やりたいこと 何?」

2021/06/15

1年休学、起業 「働く」を学ぼう 

南山大生 無農薬野菜ネットショップ

 新型コロナウイルスの感染拡大で学生生活がままならない中、起業を決意した大学生がいる。南山大外国語学部の桜井莉加子さん(21)=愛知県北名古屋市=は今春から休学し、無農薬野菜のオンラインショップを運営する。「今の学生生活を続けていいのか。自分のやりたいことって何だろう」と考え、一歩を踏み出した。(猿渡健留、写真も)

 ◇ ◇ ◇

 五月下旬、桜井さんは同県江南市の畑で、ネギの苗を植えていた。週に一、二度、契約農家での作業を手伝う。慣れた手つきで進めながら、「どんな料理に合うかな」と積極的に農家と話し合う。ジャージーが土で汚れても気にすることなく、笑顔が絶えなかった。

 桜井さんのショップ「SLOWLIFE(スローライフ)」は五月からサービスを始めた。農薬や化学肥料を使わずに野菜を育てる県内外五カ所の農家と交渉し、契約。ネットで注文を受け付け、農家から旬の野菜セットなどを全国の消費者に直送してもらう。

 コロナ禍まで、起業なんて考えたことがなかった。大学の授業がオンラインとなり、昨夏から予定していた韓国への留学もできなくなったことで、将来を見つめ直した。

 気分転換で、母が趣味でやっていた畑仕事を手伝うと、土と触れ合う喜びを感じた。高校時代にビーガン(完全菜食主義者)のフィンランド人留学生と出会って以来、環境問題にも関心があった。「化学肥料を使わない野菜は、環境にやさしいはずだ」と思いついた。アイデアが固まると、「もう勢いのまま進んだ」。大学を一年休学して取り組むことを決めた。

 有機野菜の日本農林規格(JAS)認証を受けるには費用と労力がかかり、諦める生産者も多い。桜井さんは「認証がなくても、安心安全な野菜を作る農家さんを消費者に知ってもらえれば」と期待する。ショップに出品する江南市の農場「ココニコヒロバ」を営む木村高志さん(50)は「若い人と協力できるのはありがたい。実際に作業を手伝いに来てくれて身近な存在で信頼もできる」と話した。

 桜井さんは来年春には大学に戻るが、オンラインショップの運営は続けるつもりだ。「大学で学んだ語学も生かし、野菜や環境問題とつなげる方法を考えていきたい」。子どもたちの農業体験などのイベントも計画中。野菜の注文は、スローライフのホームページ=QRコード=へ。

契約する農園で作業を手伝う桜井莉加子さん=愛知県江南市で
契約する農園で作業を手伝う桜井莉加子さん=愛知県江南市で