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【社会】非正規 テレワーク格差根深く 厚労省指針後も相談絶えず

2021/05/31

企業側 機密漏えい・備品紛失理由に

 非正規労働者にテレワークが認められない事例が後を絶たない。新型コロナウイルスの影響が長期化する中、政府は出勤七割減を目指すが、内閣府の調査では非正規のテレワーク経験は正規の半分以下。所得の少ない人ほどテレワークする割合が低いというデータもある。正規・非正規の雇用形態の違いによる所得格差が、「命の格差」につながりかねない構造をはらんでいる。 (山田晃史)

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 「正社員は一部在宅勤務をしているけれど、派遣先は非正規にテレワークを認めないようで、緊急事態宣言中も出社している」。労働組合の総合サポートユニオン(東京)に今月寄せられた女性派遣社員の相談からは、再延長となる宣言中でもテレワーク格差が根深く残る様子がうかがえる。

 同ユニオンには今年、非正規からテレワーク格差の相談が約八十件あった。企業は認めない理由として、機密漏えいや備品紛失の恐れなどを理由に挙げることが多い。在宅勤務を求めたら雇い止めされた四十代の女性派遣社員は「テレワーク差別でつらい目に遭っている非正規は多い。状況を是正したい」と、雇用の継続を求めて三月に派遣元と派遣先を提訴した。

 内閣府の昨年末の調査では、年収三百万円未満でテレワークをしている人の割合は12%だったのに対し、年収一千万円以上は51%。雇用形態別の昨年六月調査でも、テレワーク経験があると回答したのが正規で42%、非正規で18%だった。非正規はもともと接客業などの現場業務が多いだけではなく、「非正規だからという理由でテレワークさせてもらえない人がいる」(内閣府担当者)という。

 厚生労働省は三月にテレワーク導入時の注意点をまとめた指針を出し、雇用形態で差別しないように促したが、連合など各地の労組への相談は今も続く。労働問題に詳しい竹村和也弁護士は「テレワーク可能な業務に就いても非正規だけに認めないことは、不合理な待遇差として法律違反の可能性がある」と指摘し、「労組を通じ会社に是正させることが重要」と強調した。