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【地域経済】長引くコロナ 厳しい再就職 失業給付延長 急増14万人 中部6県

2021/05/17

 新型コロナウイルスの影響で離職し、失業給付の延長措置を受ける人が急増している。コロナの影響が長引き、通常の失業給付の期間内に再就職できないケースが続出しているためだ。昨年度に個別延長措置を受けた人は中部六県(愛知、岐阜、三重、長野、福井、滋賀)で延べ十四万人超。各地に繰り返し緊急事態宣言が発令され、経済が打撃を受ける中、さらなる支援策を求める声も上がっている。(松野穂波、今村節)

 ◇ ◇ ◇

 十一日午前、ハローワーク名古屋南(名古屋市熱田区)の窓口は、失業給付の手続きに来た求職者らで混雑していた。生命保険会社の営業職員だった女性(55)=愛知県豊明市=もその一人。コロナ禍で顧客訪問が難しくなり、毎月十六万円ほどあった収入が約九万円に。耐えきれず、昨年十月に退職した。今年二月から失業給付を受けながら職を探しているが、「まだワクチンを打っていないから、感染リスクが高そうな介護職や接客業は怖い」。再就職先を見つけられないまま通常の支給期間を終えた。

 女性は自己都合の退職ではあるものの、コロナの影響が大きいと判断され、特例で六十日間の給付延長を受けることができた。七月まで受給できるが「年齢も年齢なので、再就職先が見つかるかどうか」と不安を隠せない。

 給付切れが迫り、離日を考える人もいる。来月で給付が終わるという名古屋市千種区の中国籍野宮博さん(32)は昨年四月まで、中部国際空港(愛知県常滑市)の免税店で契約社員として働いていた。コロナ禍で訪日客が激減、免税店も休業に。再び店に立つ日は訪れないまま、一月末に契約切れとなった。日本語、中国語、韓国語が話せるが、「外国人相手の仕事はまったく見つからない」。収入が途絶えれば家賃の支払いも厳しくなるため、両親が暮らす中国に一時帰国を考えている。

 給付延長が認められれば、語学力を生かせる東京五輪関連の仕事に応募しようと考えているが、「延長が認められるかどうか分からない」という。

 国は昨年六月、コロナが離職に影響している場合、最大六十日間、失業給付を延長できる「コロナ特例」をスタートした。

 厚生労働省によると、失業給付の個別延長を受けた人は二〇二〇年四月は中部六県で十五人、五月は十三人だったが、コロナ特例が始まった同年六月から急増。昨年十月の二万四百八十二人をピークに高止まりしている。同省によると、延長者の大半がコロナ特例の対象者という。

 それでも、愛知県労働組合総連合には失業給付の延長や緊急小口資金の貸し付けなどコロナ対策に用意された制度を使い切り、生活に困窮する求職者からの相談が相次ぐ。事務局長代行の竹内創(はじめ)さん(53)は「コロナが予想以上に長期化し、感染拡大初期に整えた支援策を組み合わせても、生活が立ちゆかない人が出始めている。特例の再延長や再度の一律給付など、困っている人を即座に助ける支援策が必要だ」と訴える。


(メモ)
 コロナ特例 正式名称は「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応した給付日数の延長に関する特例」。緊急事態宣言下で離職するなどした場合、最大60日間、失業給付を延長できる制度で、昨年6月12日に始まった。求職活動の状況なども考慮し、管轄のハローワークが対象かどうか判断する。給付延長制度には複数の種類があり、「コロナ特例」は、元々特定の病気がある人などが対象の「個別延長」に含まれる。通常の失業給付の給付期間は年齢や雇用保険への加入期間によって3~11カ月。支給額は年齢や離職前の給料などにより日額2059~8370円。