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【暮らし】男女差別解消 まだ途上

2021/04/26

経営破綻で解雇 日航CA労組前委員長
「疑問に声あげ 社会変えよう」

 日本航空が経営破綻を理由に客室乗務員(CA)らを整理解雇して10年が過ぎた。定年の3年前に解雇され、撤回を求め闘ってきた内田妙子さん(67)は、労働組合「日本航空キャビンクルーユニオン(CCU)」の前委員長で、男女の雇用差別解消に長年取り組んできた。「私たちが勝ち取った60歳定年だった。解雇されたが、みんな定年までと頑張ってきた。最後まで働きたかった」。職場復帰はかなわず悔しさは消えない。

 ◇ ◇ ◇

 一九七四年の入社時、CAの平均勤続年数は半年の訓練期間も含め三年程度。女性の定年は三十歳で、結婚や妊娠による退職制度もあった。「CAは笑顔で接客するだけのサービス要員とみられがち。男性の利用客目線だけで捉えられ、若ければ若いほどいいという風潮もあった」

 入社後しばらくして内田さんの同期が妊娠。働きたい気持ちはあるのに職場を離れざるをえない理不尽さを、内田さんらは労組を通じて会社にぶつけた。同期は職場を去ったが、妊娠退職を拒む人は増え「子どもができても仕事を続けたい」と声が上がった。

 内田さんら女性社員や労組の訴えは少しずつ会社を動かしていった。日航は七四年に結婚退職制、七九年に妊娠退職制を撤廃、定年も男性と同じ六十歳になった。

 バブル崩壊による経済不況を受け、日航は九四年から新人CAを契約社員として雇うようになった。労組などは粘り強く正社員化を求め続け、二〇一六年に実現した。

 内田さんに解雇通知があったのは一〇年十二月。大みそかをもって解雇するとの内容だった。パイロットとCAで計百六十五人が対象になった。撤回を訴え訴訟を起こし、CAの原告団長にも就いた。

 だが、最高裁まで闘った訴訟は一五年に敗訴が確定。原告のメンバーで定年の六十歳を過ぎる人も増える一方だ。いまだに会社は復職にも解雇に対する謝罪にも応じていない。

 コロナ禍で未曽有の苦境にある航空業界。日航は雇用を維持、内田さんは「前回の反省があるのだろう」と話す。だが、現役CAから寄せられる相談を聞くと、シングルマザーなど将来に不安を抱く人も少なくない。「疑問に思うことがあれば声を上げてほしい。そうしないと社会は変わらない」と後輩にエールを送る。

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◆均等法で法整備前進
◆賃金や昇進が課題

 雇用の男女差別を巡っては、一九八六年に退職や解雇などでの性差別を禁止した男女雇用機会均等法が施行されたことを機に法整備が進んだ。だが、従来の性別役割分業意識は根強い。管理職登用もなかなか進まない。働く女性は三千万人近いが非正規雇用が多く、賃金格差も残る。

 戦後の高度経済成長下で女性労働者が増え、七二年に育児休業を企業の努力義務とした勤労婦人福祉法が施行された。ただ、女性が就くのは補助的な仕事が一般的で、結婚や出産、一定年齢での退職制度を設ける企業も多かった。

 八六年施行の均等法は、定年や退職、解雇での男女差別を禁止した。一方で募集や採用、配置、昇進に関して均等に取り扱うことは努力義務にとどまった。

 その後、九九年の改正法施行で努力義務は禁止になり、企業のセクハラ配慮義務も盛り込まれた。二〇〇七年改正では、総合職の要件に全国転勤を入れることで女性が採用されにくいなどの「間接差別」や、妊娠出産を理由にした解雇など不利益な取り扱いの禁止が盛り込まれた。一七年、マタハラ防止義務を明記。二〇年にはセクハラ、マタハラ対策が強化された。

 ただ、厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると一九年、男性の賃金を一〇〇とした場合、女性は七四・三。雇用される女性の約半数が非正規であることなどが理由だ。総務省の労働力調査の二〇年平均では女性管理職は約13%と三割を掲げる政府目標にはほど遠い。