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【社会】薬飲ませ性的暴行後絶たず 就活アプリ悪用女子大生も被害

2021/04/19

専門家「一対一の飲食避けて」

 女性に睡眠薬などを飲ませて意識を失わせ、性的暴行を加える事件が後を絶たない。就職活動用の「OB訪問アプリ」を悪用して学生を誘い出し、睡眠薬を飲ませて乱暴する事件も起きている。専門家は「初対面の男女がアプリの情報だけで一対一で会ったり、飲食したりすることはリスクが伴う」と注意を呼び掛ける。 (奥村圭吾)

 ◇ ◇ ◇

 三月、東京都内で女子大生らに睡眠薬を飲ませて乱暴した準強制性交罪で、元リクルートコミュニケーションズ社員の丸田憲司朗被告(30)が起訴された。

 OB訪問アプリで被告と知り合い、被害に遭った女子大生は「信じていたのに」「許せない」と悔しさをにじませたという。

 丸田被告について、警視庁は昨年十一月~今年三月、昏睡(こんすい)状態の女性を自宅やホテルで乱暴した容疑で四度逮捕している。

 捜査関係者らによると「企業に出す資料を見てあげる」などと飲食店に誘い出し、トイレで中座した相手の飲み物に水溶性の錠剤などを混入させていたとみられる。

 丸田被告はアプリで勤務先を親会社のリクルート、最終学歴を有名国立大と偽っていた。アプリには学生がOBを評価する欄があり、被告は自分に高評価を与えるよう実際に会った女子大生に依頼。「親身になって対応してくれる」との評価が多く、周囲は犯罪に気付けない状態だった。

 自宅からは十種類の睡眠薬計七百錠以上と、錠剤を砕く専用のすり鉢などが押収された。心療内科で自ら「眠れない」と言って処方を受けていた。被告の携帯電話からは、約四十人分のわいせつ動画が確認されたという。

 警察庁によると、昨年までの十年間に、睡眠薬を使った性犯罪事件が全国で三百八十件摘発された。ここ数年は、年間四十~八十件台に上っている。

 NPO法人「レイプクライシスセンターTSUBOMI」(東京)の望月晶子代表理事は「アプリの情報を安易に信頼するのは危険」と指摘。「初対面や信頼できない相手との一対一での飲食は避け、飲食を伴う面談の際はLINE(ライン)などで友人とつながったまま居場所を知らせ、連絡が途絶えたら駆けつけてもらうくらいの対策をしても、やり過ぎではない」と話す。

 睡眠薬は服用から数日で成分が体外に排出される。望月代表理事は「薬の成分や犯人の体液は目に見えず、鑑定の必要がある。被害が疑われるときは自分を責めたり恥ずかしがったりせず、できるだけ早く警察に相談してほしい」と助言する。

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 警察庁の全国共通短縮ダイヤル「#8103(ハートさん)」では、性犯罪被害に悩む人の相談を二十四時間、無料で受け付けている。ダイヤルは最寄りの都道府県警の専用窓口につながる。警視庁犯罪被害者支援室の担当者は「どうすればいいのか不安な時は一人で悩まず、積極的に相談してほしい」と話す。